作品情報
原題:Atari: Game Over
監督:ザック・ペン
出演:ザック・ペン/ノーラン・ブッシュネル/アーネスト・クライン
制作国:アメリカ
上映時間:66分
あらすじ
テレビゲーム黎明期に社会現象を巻き起こしながらも、突如倒産に追い込まれたアメリカのゲーム会社ATARI。そんなATARIが82年ホリデーシーズンの最重要タイトルとして発売されたゲーム「E.T」は各方面から酷評され、ATARIを倒産に追い込んだ史上最悪の「クソゲー」として歴史に名を刻み、その大量の不良在庫はニューメキシコの砂漠に埋められたという都市伝説まで生まれた。本当に「E.T」はATARIを倒産させたのか、都市伝説は真実なのか。当時の開発に関わった人々の証言を通してATARI栄光の歴史と崩壊の真相を紐解いていくドキュメンタリー。
伝説のゲームメーカーATARIの栄光と衰退、そこに関わった人々は今・・・
アメリカゲーム史の礎を築いたゲームメーカーATARI社が生み出した史上最悪のクソゲーと言われる「E.T.」。
そんなソフトが砂漠のどこかにたくさん埋められているという都市伝説の解明を軸に、伝説のメーカーの栄光の時代、そして衰退の顛末を辿るドキュメンタリー映画。
その存在がアメリカのゲーム文化に与えた影響は計り知れず、スピルバーグの「レディ・プレイヤー1」でも最後の謎の題材としても扱われているくらいだ。
というか本作の監督ザック・ペンはあの映画の脚本をアーネスト・クラインと共著している。
世間的に評価は悪いが、僕は彼の書いた「インクレディブル・ハルク」が大好きだ。(「X-MEN ファイナルディシジョン」は許せない)
クソゲーの話となると必ず話題に上がるこの「E.T.」は、もちろんあのスピルバーグの大傑作映画「E.T.」のゲーム版である。
ゲーム版と言っても50年前のこういった版権ものは今みたいに豊かなものではなく、マリオやゼル伝のようなシンプルなものにキャラクターを映画のものに置き換えた内容がほとんどである。
ゲーム版「E.T.」は、穴に落ちたE.T.が通信機の部品を集め組み立てることで故郷に帰ることを目指すゲームだ。
「E.T.」大ヒットに目をつけたATARI親会社はスピルバーグと交渉してゲーム化権を取得。
ゲームデザインとプログラミングはスピルバーグのリクエストで「インディ・ジョーンズ」のゲームを手がけたハワード・スコット・ウォーショウが任命された。
しかし、権利確保の交渉に時間をとってしまい目標のホリデーシーズンの発売に間に合わせるにはゲームを5週間で納品しなければならなくなってしまった。(既にここで涙が止まらない)
ウォーショウが作った「インディ」などのゲームは開発に数ヶ月かかっており、たった5週間しか与えられていない「E.T.」は勿論まともなデバッグもできないままやりたい仕様も実装できず、本当に間に合わせ程度の内容で発売された。
その後の評価は言わずもがなである。
そして500万本生産されたゲームのカセットの大半は売れ残り、困ったアタリはそれを砂漠に埋めた、という都市伝説がいつしか囁かれるようになったという。
砂漠の採掘許可をとった本作の制作陣たち。
その噂を聞きつけ、当日はアメリカ中からオタクたちが集まった。
映画を見ればわかるが、ヒゲデブメガネで「ジュラシックパーク」や「エイリアン」、「メタルギアソリッド」のシャツを着ているような濃ゆくて信頼できるオタクしか集まってない。ATARI強い。
広大な砂漠を何度も掘り返す時間はなく、綿密な調査のもと目星をつけた発掘作業の緊張感、最後に待ち受ける感動、エモーショナルがいきすぎてクソゲー発掘というよくわからない前提からは考えられない感動に包み込まれた。
(当たり前だと思うが)ATARIが倒産したのにはさまざまな要因があるし、開発者と「E.T.」がスケープゴートにされたのは間違いない。
今では面白半分のネタだが、当時は割とガチだったしこれが原因でゲーム業界に居られなくなったり心を病んだ人もたくさんいたようだ。
この映画も散々ATARIと「E.T.」をdisった挙句「E.T.よりあれの方がクソゲー」「こっちがクソゲー」とか「ATARIは悪くない」などと言い始め、最後には「隠蔽工作という噂もあったが・・・これはただの在庫廃棄だ」で締め括られて「んなこたわかってるんだよお!!!」と叫んでしまうところまで含めて全部が面白い。
これを見ればATARIが米オタクカルチャーに多大な影響を与えたという偉大な功績と歴史に触れられ、「レディ・プレイヤー1」がちょっと面白くなることだろう。
盛者必衰、この言葉は今も、僕の頭に響き渡っている。
この映画はNetflixなどの配信が中心で、DVDは日本でしか発売していない。
その円盤製作にまつわるこちらの記事も面白いので、興味があれば是非。