作品情報
原題:Bombshell
監督:ジェイ・ローチ
出演:シャーリーズ・セロン/ニコール・キッドマン/マーゴット・ロビー/ジョン・リスゴー
制作国:カナダ・アメリカ合作
上映時間:109分
配給:ギャガ
年齢制限:G
あらすじ
2016年にアメリカで起きた女性キャスターへのセクハラ騒動の映画化。アメリカNo. 1視聴率のテレビ局FOXニュースの元人気キャスターグレッチェン・カールソンが、CEOロジャー・エイルズを提訴。メディアの帝王による人気キャスターへのスキャンダラスなニュースは世界中を震撼させた。騒然とするFOXニュース社内では、看板番組を担当するメーガン・ケリーがその地位を得るまでの過程を振り返り心中穏やかではない。一方、メインキャスターの座を虎視眈々と狙う若手のケイラは、社長室でロジャーと二人で面談するチャンスを得るが・・・
#MeTooムーブメントの先駆けでありながら、フェミニズムのゴリ押しに終わらない痛快エンタメ作
全世界にすっかり浸透した#MeToo運動の先駆者とも言える訴訟を題材にした映画。
というと重い社会派映画かと思われるだろうが、きちんとそういった視点を持ちつつ、コメディの名手ジェイ・ローチが流石の手腕でバランスをとり、痛快でスリリングなエンタメ映画に仕上がっている。
事件発生から映画化まで3年半でこれをやってのけるハリウッドのスピード感には本当に恐れ入った。
シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーという三代女優が揃っただけでも奇跡だが、特にシャーリーズ・セロンは本人の面影が消えるほどの特殊メイクで本人似せに挑み、プロデューサーとしても参加している。
社長を訴えた者、社長に取り入った者、社長に取り入ろうとする者が邂逅し、男性社会で生き延びるためにそれぞれが独自の立場を取る様子はほとんど大奥だが、その苦労にとにかく同情する他ない。
周りのノリに合わせて下ネタが飛び交うオフィスの雰囲気、この無自覚なセクハラが当たり前のように繰り出される空気感が昔から嫌いだったことを思い出す。
みんな嫌そうにしてないのになんか嫌な感じがする「あの」雰囲気の出し方が上手すぎるし、昔通ってた学校の仲間内とか自分の会社とかにもみんなの思い出に当てはまるのではないだろうか。
「社への忠誠」と称して性的関係を要求する権力者の存在を浮き彫にする戦いが物語の軸だが、特にCEOのジョン・リスゴーを演じたロジャー・エイルズも一挙手一投足が気持ち悪すぎる怪演っぷり。
彼の部屋にマーゴット・ロビーが一人通される衝撃的なシーンは二人の名演技も相まって胸が締め付けられるし、男性を見るだけで恐怖する女性が居てもおかしくない事が誰にでも理解できるシーンになっていた。
ただスキャンダル訴訟を映画にしただけではなく、そこで働く人々のリアルな姿や現場の空気感、アメリカの保守メディアの実情など当時の社会を知る事ができて、なんとなく理解した気になっていたこの事件や#MeToo運動を一歩深く理解できる記録映画としても優秀。
必見の作品だと思います。