作品情報
原題:Le sommet des dieux
監督:パトリック・インバート
制作国:フランス・ルクセンブルク合作
上映時間:94分
配給:ロングライド、東京テアトル
年齢制限: G
あらすじ
ネパールのカトマンズを取材で訪れた雑誌カメラマンの深町誠は、長らく消息不明になっていた孤高の登山家・羽生丈二を目撃する。羽生の手には伝説的な登山家ジョージ・マロリーが記録上に残るより9年も早くエベレスト初登頂を成し遂げていた証拠になりうるカメラが握られていた。マロリーの謎を解き明かしたいと考えた深町は羽生を見つけるため帰国後に調査を開始するが、尋常ならざる執念で危険な山に挑み続ける羽生の人間性に次第に魅了されていく。
なぜ人は山に登るのか。そんな根源的な疑問に迫った登山アニメの傑作
夢枕獏の小説を「孤独のグルメ」でお馴染みの谷口ジロー先生が漫画化。
2016年には日本で実写映画化もされた原作を今回はフランスでアニメーション映画として制作。
映像も音も劇場鑑賞にふさわしい高水準でフランスアニメーション界のレベルの高さを感じる。
セザール賞のアニメ賞に輝いたのも納得である。
死が目の前にいる登山の緊迫感、雄大な山々に人知を超越した神々の存在を感じさせるような凄まじい音響のサラウンド演出。(日本のアニメも映像はハイレベルだが、そろそろ音もこのくらい凝ってくれてもよいのにね)
映像面も巨大なスクリーンいっぱいに広がる雪山、氷や岩肌の質感。
その真ん中をぐいぐい突き進む点のように小さな羽生の対比は、劇場鑑賞という環境で真価を発揮する演出に余念がない。
そしてやはりアニメ映画はライティングと美術が重要だと改めて感じた。
近年は日本のアニメもモリモリの特効で魅せる進化が凄まじいが、この作品もその辺がとてもハイレベル。
情報の足し引きが絶妙でシンプルなのに引き込まれ没入する画面がひたすら続く贅沢な映像体験。
アニメだからこそできる構図やシーンのテンポ感、まさに「アニメである意味」を感じられる作りなのもいい。
フランス製だが原作の80年代日本の雰囲気もしっかり再現できてて、アニメーションの質感以外ではほとんど海外製を感じない。
枝豆を投げたりラーメンの啜り方だったりボディランゲージが外国人っぽいのはあったけど。
キャラクターがみんな日本人なので吹き替えもとても馴染む。(というか超ベテラン声優人の演技に酔いしれる)
とにかく音のクオリティが高いのだが、他の音に対して吹き替えの声だけバランスがおかしかったので劇場で原語版が観られる機会があれば嬉しい。
登山家を扱ったドキュメンタリー映画「フリーソロ」や「アルピニスト」でも思ったのだが、登山家というのはいつも同じ目をしている。
命懸けの挑戦をしているのに、その目は強い輝きを放っている。
神々に挑む英雄のようにも見えるし、時にそのまま神に連れて行かれてしまう人もいる。
マロリーの謎というミステリーを軸に据えながら、山に取り憑かれた男たちの生き様を描き、その心情を深く考察したドラマが見どころだ。
思ってる以上にエンタメとしてしっかり面白いので、フランスアニメはあまり観ない人でも是非挑戦してほしい。
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