作品情報
原題:Making Waves: The Art of Cinematic Sound
監督:ミッジ・コスティン
出演:ウォルター・マーチ/ベン・バート/ゲイリー・ライドストローム/ジョージ・ルーカス/スティーブン・スピルバーグ/ロバート・レッドフォード/バーブラ・ストライサンド/ライアン・クーグラー/デヴィッド・リンチ/アン・リー/ソフィア・コッポラ/ピーター・ウィアー/クリストファー・ノーラン
制作国:アメリカ
上映時間:94分
配給:アンプラグド
年齢制限:G
あらすじ
ハリウッド映画の音響制作にスポットをあてたドキュメンタリー。1927年に初のトーキー映画が誕生して以来、進化を続ける映画音響。本作では多数の新旧名作群の映像を使用し、映画音響の世界を紹介する。ルーカスやスピルバーグ、ノーランなどの映画監督陣、ベン・バートやウォルター・マーチといった映画音響を牽引してきたレジェンドのインタビューも盛り込み、映画における「音」の重要性に迫る。
これを観れば映画を観るのが何倍も面白くなる!映画音響の楽しみ方がわかる究極の参考書
音に注目すれば映画はもっと楽しくなる。
もし誰かに好きな映画を一本だけ観せることが出来るなら、僕はこの映画を選ぶだろう。
映画の半分は音で出来ており、どんなに素晴らしい映像の映画でも良い音がなければその真価は発揮できない。
音の出来不出来は映画の評価を根底から変えてしまう、それほど重要なファクターなのだ。
そんな映画を構成する大要素の一つである「音」にフォーカスし、特に「効果音」「音響効果」といった、劇伴や映画音楽と違いあまり目立つことがない分野に迫る。
映画音響発展の歴史やその仕組み自体を、巨匠たちが自身の経験を基に講義のようにかなり細かく語り尽くす非常にありがたい映画だ。
もう予告だけでその一端が拝めるので、まずはそこから観てほしい。
この映画では映画音響を「映画音響史」「今現在の映画産業における音の各分野」に分けて紹介してくれる。
そこから映画音響を「音楽」「効果音」「音声」に分け、例えば効果音なら「SFX」「フォーリー(効果音を作る人)」など更に細分化した業種まで、それぞれがどんな役割か細かく解説してくれる。
僕は幸いなことに映画館で観ることができたのだが、モノラルから2ch、5.1chの違いをIMAX上映前の「ほらここから」映像並みに劇場の音響システムを使ってリアルタイムで実演してくれたので、こんなにわかりやすいことはなかった。
さらにこの映画の素晴らしい点のひとつとして、今ではなかなか上映できない新旧様々な名作映画のアーカイブ映像をかなりたくさん使用しており、念願のあの映画たちの音と映像を大量に観ることが出来るという点もある。
ルーカスやスピルバーグ、アン・リーといった巨匠たちが具体的な映画を例に挙げ、その映画がもたらした音響面での革新性や映画を観る上でいかに音が重要な役割を持っているのかを明快に解説してくれる。(大作だけかと思ったらしっかりリンチまで出てくるので分かってるね!)
また、ベン・バートやウォルター・マーチといったレジェンド音響スタッフが当時の自分達がどういう事を考えてそのサウンドデザインを作り上げたのか熱弁。
彼らの話を聞く前と後では映画に対する解像度が全然違い、劇中で触れられた映画を全てもう一度見直したくなることは間違いないだろう。
お勉強のようなお堅い映画のように構えてしまうかもしれないが、何度も言うように非常に具体的な実例で誰でも理解できるように映画音響の秘密を明かしてくれるとても優しい映画だ。
90分間ずっと目から鱗、知らない世界が開かれ続け脳には快楽成分が満ち溢れる。
今後観る映画の魅力を数十倍に引き上げ、映画の見方、聴き方が変わること間違いない全映画ファン必見の傑作ドキュメンタリーだ。
本編映像も出来るだけ引っ張ってきたので、お願いだからこれだけでも観てください。