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映画「17歳の瞳に映る世界」(2021)

作品情報

原題:Never Rarely Sometimes Always

監督:エリザ・ヒットマン

出演:シドニー・フラニガン/タリア・ライダー/セオドア・ペレリン

制作国:アメリ

上映時間:101分

配給:ビターズ・エンド、パルコ

年齢制限:PG12

あらすじ

ペンシルバニアに住む高校生のオータムは、ある日自身が妊娠していたことを知る。未成年でも親の同意なしに中絶ができるニューヨークへ向かうため、親友でもある従姉妹のスカイラーと共に二人でバスの旅に出る。

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17歳の少女から見える世界を追体験するロードムービー

王様のブランチで紹介されているのを見て「へ〜、今はこんな映画があるのか」と思い見るつもりだったのに行かず。

ようやく見たけどまさか2年も経っていたとは・・・去年くらいの映画だと思ってた・・・

 

邦題の通り、妊娠中絶のため遠く離れたニューヨークへ向かう17歳の瞳に映った世界を彼女目線にたち切り取った映画。

クロースアップを中心に徹底して彼女の表情を映し、その心情を映す演出はドキュメンタリーのようなタッチ。

女性2人のロードムービーであり、中絶に向かう道中にもまた望まない妊娠につながりそうなゾッとする体験が大なり小なりのセクハラという形で描かれる。

そんな中でお金がなくなり身売りで帰りの電車代を稼ぐのも、本当にそれしかなかったのか、そういうところだぞという話なのか、色々示唆的でどう取るべきかと思ったが、手の演技が素晴らしすぎるのでもうそれでいい。

 

中絶というとアメリカでは許されないイメージがあるので、扱われるとしても基本否定的で最後は中絶をやめてもっと素晴らしい生き方に気づくという映画がほとんどだったと思う。

本作のように中絶によって救われる物語がアメリカで作られて、絶賛されていることがとても意外で時代が変わっているのだなぁと感じた。

というと非常に社会的、政治的なテーマがあると思うのだが、映画自体はとても詩的だ。

 

存在感を放った主演シドニー・フラニガンは本作がデビュー作。

監督の演出力もあるだろうが、望まない妊娠をした主人公の不安や憂鬱、先の見えない日々を過ごす鬱屈を基本無表情な顔の向こうに繊細な感情表現が見えてくる。

従姉妹で親友のスカイラーを演じたタリア・ライダーも魅力的で、W主人公がしっかり映画を作り上げている。

 

原題の"Never Rarely Sometimes Always"は中絶の手術前にカウンセラーからの過去の性的経験や病歴を確認する質問に答える回答の4択で、答えにくい質問に答えやすくするためや、セカンドレイプを防ぐ目的がある。

このシーンは16mmフィルムで撮影し、実際にカウンセリングの経験があるケリー・チャップマンがカウンセラー役を演じている。

じっとフラニガンの表情だけを捉えるカメラと個人的な質問に対する無機質な回答で閉じ切った心が開かれる瞬間が胸にじわじわと迫ってくる。

 

総じて一番印象に残ったのはあまりにも素晴らしいエレーヌ・ルヴァールの撮影。

少女の不安、焦り、そんな心情で見える世界の色かカメラの切り取り方で巧みに表現されている。

そして女性の日々感じる無意識のセクハラに対する不快感が、男性視聴者にもリアルに伝わる監督の演出もまた匠の域だ。

 

監督の演出、魅力的な主演、素晴らしい撮影監督が揃うと映画はこんなにも強靭に仕上がるということか。

胸に突き刺さる珠玉の映画でした。