作品情報
原題:The Mustang
監督:ロール・ドウ・クレルモン=トネール
出演:マティアス・スーナールツ/ジェイソン・ミッチェル/ブルース・ダーン/ギデオン・アドロン・コニー・ブリットン
制作国:フランス・ベルギー合作
上映時間:100分
年齢制限:PG12
あらすじ
ネバダの刑務所で服役中のローマンは、自身の過去から逃れようともがいていた。そんな中、彼は競売にかけるために野生馬「ムスタング」を調教する社会復帰プログラムに参加することになり、マーキスという気難しい馬の調教をすることになる。ベテラン調教師のマイルズや受刑者仲間たちに助けられプログラムをこなしていく中で、暗い過去や自分自身にも真正面から向き合えるようになっていく。
野生馬を調教する更生プログラムを題材に描かれる救済と再生の物語
人間×馬というハズレのないジャンルということを差し引いてもとんでもなく素晴らしい映画でサンダンス国際映画祭でも高い評価を受けたが、まさかの日本未公開作品。
日本ではスターチャンネルで放送され吹替版(我らが諸星すみれも出演)まで存在しているが円盤は出ておらず、U-NEXTとかたまにNetflixなんかでも配信していたような気がする。
極限までセリフを減らし、ローアングルやクロースアップを多用したカメラワークで語るスタイル。
ヨーロピアンビスタ画角にビシッとハマったカッコいい画面で馬と人の心情を的確に捉える映像が見応え抜群だ。
監督は実際にネバダ州の刑務所で行われているこの更生プログラムを見学し、脚本を執筆。
撮影も閉鎖された刑務所で行い、実際にプログラムに参加した元受刑者も多数出演している。
プログラムで調教された馬はオークションで警察などへ売られていき、野生馬の数調整など様々な面で役立っている。
ちなみにこのプログラムを受けた受刑者の再犯率は4%(普通は70%以上)というデータもあるらしい。
ベテラン調教師のマイルズが言う「馬をコントロールしたければまず自分をコントロールしろ」というセリフがもうこの映画の全て。
馬の調教を通して感情の制御、他者との触れ合いを学ぶとこがこのプログラムの目的そのもので、それをそのまま描くだけでこんな立派な映画になってしまうのだ。
荒ぶる野生馬と自らの罪に向き合えない受刑者、動物たちの行動に人間の心が映る脚本と映像で語る演出力は、とても初監督作品とは思えないクオリティ。
マティアス・スーナールツとブルース・ダーンの名演が映画の説得力に厚みを与えている。
ローマンがとった最後の行動、そして独房から見た景色。
その美しさに最後まで心が鷲掴みにされっぱなしだった。
映画館で見たい。
そして円盤を出してくれ。