作品情報
原題:Top Gun: Maverick
監督:ジョセフ・コシンスキー
出演:トム・クルーズ/マイルズ・テラー/ジェニファー・コネリー/ジョン・ハム/グレン・パウエル/ルイス・プルマン/チャールズ・パーネル/バシール・サラディン/モニカ・バルバロ/エド・ハリス/ヴァル・キルマー
制作国:アメリカ
上映時間:131分
配給:東和ピクチャーズ
あらすじ
アメリカ海軍のパイロットであり、現在はテストパイロットとして軍務に服してきたピート・"マーヴェリック"・ミッチェルは、かつて自身も厳しい訓練を積んだエリートパイロット養成学校、通称「トップガン」の教官に任命される。優秀だが型破りな彼の指導に訓練生たちは戸惑い反発する。その中には、かつてマーヴェリックの相棒で訓練中に命を落とした相棒”グース”の息子”ルースター”の姿もあった。
トム・クルーズは如何にしてコロナ禍の劇場を救ったリアルヒーローとなったか
映画の評価は映画の内容だけで決まらず、その時の世情や関係者たちのエピソードによる印象でも大きく左右される。
そういう意味では、あらゆる条件がバチッとハマったのがこの「トップガン マーヴェリック」だ。
あのトム・クルーズの出世作にして空戦アクション、そして青春映画の金字塔「トップガン」の続編。
36年間、ふさわしい続編が作れる確信が得られるその時を待ち続け、遂に製作が始動。
2019年夏に公開予定だったが延期を繰り返し、ようやく公開かと思ったら新型コロナウイルスの影響でさらに延期。
合計6回の延期を経てようやく2022年5月27日に公開された。
そして、そのエネルギッシュでパワーに満ち満ちた映画はコロナ禍で疲弊しきった映画業界、そして娯楽に飢えていた観客の心にドンピシャでハマった。
一瞬で興奮の坩堝に引き込まれる圧倒的な映像と音響。
これは家で見てもしょうがない、トムが劇場公開を固辞したのも納得だ。
この3年劇場で働いていた身としては、本当に辛い日々の連続だった。
楽しみにしていた映画は次々に延期され、一部は配信送り。
毎月の上映ラインナップを揃えるのにも一苦労で、洋画が一本も用意できないことすらあった。(旧作リバイバルで乗り切るなどしたが)
邦画とアニメ、一部ミニシアター系作品はあったが、ハリウッドのバジェット映画がないシネコンはやはり寂しい。
そういった状況でも公開された「TENET」や「ワンダーウーマン 1984」はそんなに入らなかったとはいえ、ひとときの安心を得られた非常に思い出深い作品だ。
「トップガン マーヴェリック」に満ちる80年代映画の精神を受け継いだスタイルとトム・クルーズという研ぎ澄まされた魅力のスター俳優の存在は、まさに今の世の中が必要としているものだったと思う。
この映画があるのなら、こんな映画が作られるのなら、まだ映画館は立ち直れる。
最高の映画を最高の環境でお届けできる場所を失くしてはいけない。
これは映画を観た僕の心に生まれた気持ちであり、トムからの「まだ俺がいるぞ!」という力強いメッセージのようにも感じた。
久々に詰めかけた人々でいっぱいの劇場。
純度の高い娯楽映画を観て満足げに帰る人々の明るい表情と声。
僕が知っている映画館が戻ってきた瞬間だ。
名前で観客が呼べる、いわゆる「スター俳優」の時代が終わって久しいハリウッドだが、そんな時代に全盛を迎えた俳優たちの中でも、トムは今もひときわ眩い輝きを保ってキャリアハイを更新し続け、未だ最前線で映画作りに人生をかけている。
映画だけでなくそんな彼の生き様や映画制作に対する真摯な姿勢のおかげで、2022年は闇の時代に一筋の光を感じた年だった。
コロナ禍の映画産業を背負って立った男。
お前がトップだ。