作品情報
監督:座古明史
出演:菱川花菜/清水理沙/井口裕香/茅野愛衣/高森奈津美/日岡なつみ/半場友恵/前野智昭/内田雄馬/花江夏樹
制作国:日本
上映時間:62分
配給:東映
年齢制限: G
あらすじ
世界中の美味しい料理が集うステキな街、おいしーなタウンを舞台に、人々の「おいしい笑顔」を守るべく活躍するプリキュアたちの姿を描く。ある時、おいしーなタウンにお子さまランチのテーマパーク「ドリーミア」がオープンし、キュアプレシャスこと和実ゆいたちはドリーミアで遊ぶうちに隠されたある秘密を知る。次々と異変が起こる中、ごはんの力と憧れへの想いを信じてゆいたちは立ち向かっていく。
叶えたい夢、過去に抱えた心の闇、ごはんの力はどこまで届くのか
今年で20周年を迎えイベントも盛り上がっている人気アニメ「プリキュア」シリーズの劇場版通算31作品目。
テレビシリーズ19作品目「デリシャスパーティ♡プリキュア」の劇場版。
毎年春と秋に公開されていたプリキュア映画シリーズだがコロナ以降その流れが乱れ、本作「デパプリ」からは遂に年一回の秋のみ制作になってしまった。
いちプリキュアおじさんとしてもそうだが、映画館で働く身としてこれは非常に悲しい出来事だった。
映画を見に来た子どもたちの笑顔にはとても元気がもらえるし、劇場内にドラえもんや他の映画のポスターを貼っていると喜んで反応してくれるのでやりがいにつながる。
特にプリキュアシリーズは、映画を楽しみに待っていた女の子たちがプリキュアの衣装を着て友達と観に来るなど気合が入っており、かわいいポップコーンバケツを買ったりエンディングのダンスを観て嬉しそうに帰っていくところを見ると純粋に幸福を感じる。
そんな年に2回の楽しみが減ってしまうのは非常に残念だったが、子どもたちの笑顔のために明日もまたがんばろうと思う。
さて、映画については近年のプリキュアの中ではかなりドラマに比重を置いた重厚な作りの演出アニメに仕上がっていた。(ドキプリ映画を彷彿とさせる)
大人帝国を反転させた様な設定や、割と重めな悪役のバックボーンを真正面から描く姿勢もポイントが高かったし、声の芝居も明らかにテレビとは違うディレクションを受けているのを感じる。
大人の人形にされたケットシーが大人をぬいぐるみにする技術で復讐を果たし全ての子どもを守る世界を作ろうとするという、文字にするとだいぶ恐ろしいことをやってる。
いまや子どもたちのヒーローたる炭治郎くんにこの役をやらせるところにも何か狙いがあったのかな。
ヒープリ映画の様に作画がリッチに暴れていたわけではないが、カメラワークやレイアウトなどの演出の土台がしっかりしており、盛り上がるところでバチッとハマる音楽やSEの使い方など、演出がキレッキレ。
クライマックスのバトルは作画もさることながら、変身BGMの音量を一段階上げて最高のタイミングに挿入してぶっ放す音ハメ演出までキメてきたので応援上映があったら死ぬほど盛り上がってたと思う。
ケットシーの過去のシーンは行き届いた演出の作画と絶妙な明暗のコントロールされた美しい画面構成には感動した。
お腹が空いてちゃ力は出ない、空腹と絶望の悪循環に陥っていたケットシーを救ったご飯のシーンはゆいちゃんが女神に見えるよ。
ごはんは笑顔、これは真理だと農林水産省も述べておりますが、そんな本作のテーマでもあるフレーズを劇場制作班が見事に解釈し物語に反映させている。
同時に展開されるコメコメがヒーローになりたがる王道の物語の根底にも「ごはんは笑顔」の精神が宿っているし、テレビでは全くへこたれる姿を見せない無敵のゆいちゃんが「ごはんは笑顔じゃどうにもならないのかな」と漏らすシーンは印象に残った。
ゆいちゃんとコメコメ、ケットシーが繊細に絡み合う物語は少し複雑で暗いお話でもあるのだが、そこが子どもにも伝わる様に表現されているところに匠の技が光る。
さすが座古さん。
田中裕太監督とこの人は本当に間違いない。
一流のクリエイターによる本気のクリエイティブを味あわせてもらえるという点で、子ども向けも大人向けも垣根はない。
1時間弱でサクッと高クオリティを摂取できるという点で、僕は子ども向け劇場アニメを割と誰にでもオススメしているのだ。(そして引かれるのが世の常である)
今年のヒロプリ映画、20周年で久しぶりのオールスター映画になるらしいので子どもだけでなく大人もたくさんご来場いただけるだろう。
熱い秋が待ってるぜ。