作品情報
原題:Guardians of the Galaxy Vol. 3
監督:ジェームズ・ガン
出演:クリス・プラット/ゾーイ・サルダナ/デイブ・バウティスタ/カレン・ギラン/ポム・クレメンティエフ/ヴィン・ディーゼル/ブラッドリー・クーパー/ショーン・ガン/チュクウディ・イウジ/ウィル・ポーター/エリザベス・デビッキ/マリア・バカローバ/シルベスター・スタローン
制作国:アメリカ
上映時間:149分
配給:ディズニー
年齢制限:G
あらすじ
サノスとの戦いで最愛の恋人を失ったショックから立ち直れないピーターと、彼を心配する日々を送るガーディアンズの仲間たちの前に、銀河を完璧な世界に作り替えようとする恐るべき敵が現れ、ロケットが瀕死の重傷を負う。ロケットの命を救う鍵は、彼が仲間にも語らなかった知られざる過去にあった。
銀河の落ちこぼれたち、有終の美
前作から6年を経て遂に公開された第三作。
過去の不適切発言を掘り起こされクビになったジェームズ・ガンが復帰し、出来上がったのが「完全無欠な種族とそれらによる完璧な世界の創造を目指して極悪非道な実験を繰り返す博士を、他者に人生を壊された過去を持つ者の集団がぶちのめす映画」で、決め台詞が「あいつは『ありのまま』であることが許せないんだ」という、ディズニーに突き立てるには鋭すぎるナイフ。
MCU最盛期を知る身としては、もはやシフト作成など恐るるに足りないシリーズになってしまい寂しさも感じているが、このレベルの映画を劇場の大スクリーンと音響で観られるのは至上の喜びだ。
大傑作「Vol.2」にどこまで迫れるか、そんな気持ちで待ち侘びておりました。
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーにはバカバカしい会話やギャグが満ち溢れ、根幹にはドラマチックな物語を持ったキャラクターたちがいる。(そして他のMCU予習がほぼ不要)
第一作目では、はぐれ者が集まって友人になる物語を、第二作では彼らが困難を乗り越えて家族になる物語を、今作では自らの目を背けていた過去に向き合い、それを受け入れて前進する姿を描く。
「インフィニティ・ウォー」「エンドゲーム」を経て増えたメンバーのドラマを全て描くので2時間半の長尺でもやや詰め込んだ感は出てしまっているが、長さを感じさせずに楽しく観られるジェームズ・ガンの構成力の高さは相変わらず素晴らしかった。
動物が酷い目に遭うのが苦手な人は見ないでください
最近の流行りは事情を抱えたヴィランだが、ガーディアンズにおいてそんな眠たい理屈は存在しない。
誰もが嫌悪するような救いようのない悪をボコボコにするのがこのシリーズの魅力だ。
今回のハイ・エボリューショナリーもその点非常に優秀で、ロケットやその仲間たちに行った行為は極悪非道もいいところ。(アントマン&ワスプに続き「これ絶対『メイドインアビス』好きなやつが製作にいるだろ」ってなるやつ)
動物たちがえらい目に遭うので、そういうのが苦手な人は見ない方がいいですマジで。
ガンが過去に撮ったB級グロ映画っぽさちょいちょい感じられるので、そこは好みが分かれるかもしれない。
まとめ
愛せるキャラクターたちがお互いの魅力を引き立てあう掛け合いとジェームズ・ガンの紡ぐ物語は、MCUシリーズにおいて他に類を見ない洗練されたスタイルを確立したと改めて実感した。
アダム・ウォーロックはやや義務感を感じる扱いになってしまい残念だったが、前半のロケットの過去に焦点を当てたストーリーは大変素晴らしく、仮にロケットがベッドの上に固定される時間が長すぎてしまうとしてもやる価値はあっただろう。(強いて言えばグルートとの関係はもっと掘り下げてくれるものだと思っていたが・・・)
後半はようやく揃ったガーディアンズの集大成として観たかったシーンをこれでもかと見せてくれて大満足。
欠けていた何かを埋めるために寄り集まり他者に尽くした彼らが、自分のために生きる事について考えそれぞれの結論を出した、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーを締めくくるにふさわしい旅立ちの映画だ。
GotGの三部作+αはジェームズ・ガンの代表作と呼べる僕のマスターピースです。
約10年、ありがとうございました。
〈余談〉
クライマックスの見せ場になるのが2分にも及ぶ及ぶワンカット風のアクションシーン。
スタントコーディネーターが殺陣を考えるのに数ヶ月、撮影に3日、ポストプロダクションで1年という恐ろしい期間があの2分にはつぎ込まれている。
ハリウッド映画のハイパークオリティを作れるのは魔法でもなんでもない。
(もちろん才能もあるだろうが)2分にほぼ2年かけられる金と時間がハリウッド映画にはある、というシンプルな答えだろう。
日本の映画だと金も時間もなく、今日中に撮らねばと急ぎ、納得がいかなくてもその素材を使わざるを得ない現場で溢れてる。
もちろんそれでもいい邦画はたくさんあるので「邦画はダメ」と言いたいわけではないですが。
ワンシーンにかけるコストが半端じゃないなぁと思った次第でした。