作品情報
原題:A Quiet Place: Day One
監督:マイケル・サルノスキ
出演:ルピタ・ニョンゴ/ジョセフ・クイン/アレックス・ウルフ/ジャイモン・フンスー
制作国:アメリカ
上映時間:100分
配給:東和ピクチャーズ
年齢制限: G
あらすじ
ニューヨークに暮らす末期癌のサミラは飼い猫のフロドと共にマンハッタンを訪れていた。すると、突如として空から多数の隕石が降り注ぎ、飛来した凶暴な「何か」が人々を無差別に襲い始める。生存者は身を隠し息を潜め脱出を図るが、アメリカ軍は「何か」の侵入を抑えるためマンハッタンと外を繋ぐ橋を爆撃で落としてしまう。余命わずかなサミラは死ぬ前に思い出のピザが食べたいと思い立ち、偶然出会ったエリックと共に「何か」が蔓延る市街を進み始める。
予算爆増で描く世界崩壊1日目の大都会&まさかの人情映画化
悲しいかな、映画館はすっかり閑散期です。
毎日赤字を積みながら夏休みを待つ。
そんな日々を過ごしています。
今年はコナン以外のヒット作にも恵まれず、ハリウッドのストで延期作が増えたこともあり深刻な作品不足。
夏休みのど真ん中に去年もやったばかりの「サマーウォーズ」をまたやったり、最近東映がハマってるヒット作リバイバル企画で「THE FIRST SLAM DUNK」をやったりしているのも、作品数やヒット作の不足が原因なんじゃあないでしょうか。
そんな辛い日々を送る中でも映画があれば楽しく生きていけるはず。
正直日本でのヒットは全く期待できませんが、それでもクオリティは映画ファンなら必見の「これぞハリウッド映画」な作品。
それがこの「クワイエット・プレイス : DAY 1」でございます。
最近「ブルー きみは大丈夫」でファミリー映画デビューした俳優監督ジョセフ・コシンスキーの出世作「クワイエット・プレイス」の番外編。
今回は時間を遡り、「何か」が襲来した1日目の出来事を描く。
前作までは低予算ながらアイデアと工夫で見事に新ジャンルを構築したホラー映画だったが、今回は番外編ながらしっかりと予算をかけ、ホラー演出は踏襲しながら大都市で群衆が「何か」の軍団に襲われるスペクタクル映画としてもかなり楽しめる。
それだけでなく、最後にしたい事の「覚悟」を決めた余命わずかな主人公と、それを本気で叶えようと助力してくれる相棒との人間ドラマが展開され、まさかの情緒あふれる演出たっぷりの抒情性高い人情映画にしてくるとは・・・
そう思ってネットの感想を見ていたらやれ「主人公がウザい」だの「末期癌だからって何してもいいと思うな」だの狭量な感想ばかり。
いつから世界はそんな侘しい人間ばかりになってしまったのか。
毎日全身の激痛に悩み明日の命もわからない、人生に絶望した主人公の切なさとやるせなさ。
世界が終焉を迎えたことで逆に人生を見つめ直し、生きる意味を考え、その結果ピザを食べに行く主人公の最後の覚悟と生き様をルピタ・ニョンゴは見事な演技で表現しきっている。
それを支えるジョセフ・クインとの関係性も絶望的な終末を目前にした二人の、男女を超えたもっと原初的な何か。
ほとんど「君たちはどう生きるか」って言われてるようなもんでしょこれ。
宮﨑駿とマイケル・サルノスキに言われるのじゃだいぶ違うけど、多分そう。
と熱くなりつつ、正直内容はあらすじから想像できることが全て順番に起こる予定調和な展開。
ただ、マイケル・サルノスキ監督の演出と俳優陣の演技、そして100分という非常に素晴らしいタイトな尺に詰めたおかげであらゆる点で「ちょうどいい」娯楽映画に仕上がっております。
映像もさることながら、このシリーズは本当に音の作りがいい。
音を出したら死ぬ世界での静寂の見せ方はもちろん、今回は大都市ニューヨークで「音を隠すなら音の中」と言わんばかりに周囲の雑音を利用した逃亡劇を繰り広げ、またこの映画の見せ方を一つ進化させている。
映画館といえば大画面、大音響と思われがちですが、静寂こそ映画館の腕の見せ所。
爆音と静寂の緩急の付け方が上手いので、迫力の分厚い音と、それがスッと吸音され一瞬で静寂に切り替わる、作り込まれた音響を再現できる立派な設備を持った映画館で観れたら間違いなく最高。
あと空から降り注ぎ縦横無尽に襲いくる「何か」のサラウンドもすごいのでドルビーシネマとかあったらオススメかもしれない。
そして、この映画を観たらもしかするとニューヨークピザが食べたくなるかもしれない。
お店のショーケースに直径50cm以上のピザが並び、1ピースから販売しているような、そんな本格ニューヨークピザ。
断じて石窯ナポリピッツァなどではない。
これが食べられるお店を探しておくといいかもしれない。
これは独立した作品として楽しめるが、やはり「3」が待ち遠しくなってしまう。
エミリー・ブラントとジョセフ・コシンスキーの子供が大きくなるまでは難しいかもしれないが、いつまでも待ちたいと思う。