映画「グッバイ、レーニン!」(2004)
作品情報
原題:Good Bye Lenin!
監督:ヴォルフガング・ベッカー
出演:ダニエル・ブリュール/チュルパン・ハマートバ/カトリーン・ザース/マリア・シモン
制作国:ドイツ
上映時間:121分
あらすじ
1980年代末、東ベルリンの青年アレックスは、父が西ドイツに亡命したせいで東ドイツの社会主義に傾倒した母と姉の3人で暮らしていた。ある日、反体制派のデモに参加していたアレックスを見た母親が心臓発作で倒れ昏睡状態に陥る。8ヶ月後に母は意識を取り戻すが、眠っている間に東西ドイツを隔てるベルリンの壁は崩壊し、社会は激変していた。今度ショックを受けたら命が危ないと医者に告げられたアレックスは、母親に国家統一の事実がバレないようあらゆる手を尽くして崩壊前の東ドイツの生活を作り出そうと奮闘する。
時代に翻弄されつつも強く生きる家族の絆をユーモラスに描く珠玉の感動作
ドイツ映画を代表する傑作コメディドラマ。
夫の亡命が原因で社会主義に傾倒した母を持つ青年が、昏睡状態から目覚めた母が平穏な暮らしを全うできるよう、国家統一を悟らせまいとあれこれ策を講じるというお話の発想が大勝利すぎる。
傑作的な脚本なのにリメイクされないのは東西ドイツの環境が特殊すぎるからだと僕は踏んでいる。
流通する西ドイツの製品をゴミ箱から漁った東ドイツの入れ物に詰め替えて家に持ち帰り、友人たちと偽のニュースを作ってビデオで見せたり、近隣住民にも口裏を合わせるよう頼んだり、あの手この手で東ドイツを再現しようとするピュアな青年を若きダニエル・ブリュールが好演している。
基本的にコメディだが、迫力満点のデモシーンや東ドイツに押し寄せる変革の波を感じさせる描写は非常にシリアスで社会派。
冷戦や壁の崩壊からまだそう年月も経っていない時期に作られたドイツ映画であるが故だろうか。
「僕の理想の東ドイツ」というセリフの通り、これは社会主義体制への批判というよりは過ぎ去った時代への郷愁と願望の映画だと思う。
華々しい変革の犠牲になった校長や宇宙飛行士に重要な役割が渡され、母のために理想の東ドイツによる東西再統一の歴史を自ら作り上げる。
荒唐無稽な設定に史実をおりまぜた、母と子の愛による優しい嘘の物語だ。