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映画「ペルシャン・レッスン 戦場の教室」(2022)

作品情報

原題:Persian Lessons

監督:バディム・パールマン

出演:ナウエル・ペレーズビスカヤート/ラース・アイディンガー/ヨナス・ナイ/レオニー・ベネシュ

制作国:ロシア・ドイツ・ベラルーシ合作

上映時間:129分

配給:キノフィルムズ

年齢制限: G

あらすじ

第二次世界大戦中、ナチス親衛隊に捕まったユダヤ人青年のジルは、とっさに自分はペルシャ人だと嘘をつき処刑を免れた。しかし、将来イランで料理店を開く夢を抱いているナチス将校のコッホ大尉は、ジルにペルシャ語を教えるよう命じる。ジルはその場で考えたデタラメの単語をペルシャ語と偽りコッホ大尉の信用を取り付けるが、喜んだ大尉から毎日40語の新しい単語を教えることを命じられてしまう。

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見事な着眼点と構成力で紡がれた異色のホロコースト映画

Twitterでこの映画についてバズったツイートも「まさかの設定がめっちゃ面白い一触即発のアンジャッシュ的ショートコント!」みたいな印象を受ける内容だったので、いざ観たらゴリゴリにシリアスでスリリング、そして衝撃のクライマックスに震えが止まらない大傑作だった。

 

ナチス親衛隊に殺されそうになったユダヤ人のジルは、咄嗟にペルシャ人のふりをしたせいでペルシャ語の授業をするハメになる。

毎日40語、架空のペルシャ語強制収容所の仕事中に考え、夜はそれを大尉に教える。

適当に考えればいいものかと思ったら、相手が至極マジメで教えた単語をしっかり全て暗記してくるではないか。

3日で120語、10日で400語、1ヶ月で1200語。

大尉に教えた嘘の言葉を忘れてしまえば命はない。

生存を賭けた地獄の暗記生活が始まる。

 

というあらすじだけ読んだら確かに若干コメディ臭もするが、至ってシリアスな戦争ドラマだ。

 

突拍子もないシチュエーションから始まった映画だが、ホロコーストを描いた往年の名作たちに負けないほどにユダヤ人がナチスから受けた受けた仕打ち、戦争の恐ろしさや悍ましさを静かに重く現代に伝える。

特に中盤まで何となく行われていたとある暗記方法が終盤に大きな意味をもたらす結末につながる巧みな構成に感心するばかりでなく、作り手側の大きな重いメッセージを感じた。

 

人々の興味を引く奇抜な設定から王道の重厚なメッセージを人々に訴えかける新時代のホロコースト映画。

必見です。