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映画「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」(2022)

作品情報

原題:Guillermo del Toro's Pinocchio

監督:ギレルモ・デル・トロ/マーク・グスタフソン

出演:ユアン・マクレガー/デビッド・ブラッドリー/グレゴリー・マンバーン・ゴーマンロン・パールマンジョン・タトゥーロ/フィン・ウルフハード/ケイト・ブランシェット/ティム・ブレイク・ネルソン/クリストフ・ヴァルツティルダ・スウィントン

制作国:アメリ

上映時間:116分

配給:Netflix

年齢制限: G

あらすじ

ファシズムが台頭する時代のイタリア。戦火で息子のカルロを亡くし悲しみに暮れる木彫師のゼペットが心を癒すために作った木の操り人形に命が宿る、いたずら好きでわがまま、人間の気持ちを理解できないピノッキオは、見世物小屋の男に騙され興行の旅に出る。旅の途中で出会う人々を通してピノッキオは愛と悲しみを知り、やがて人間になりたいと願うようになる。

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現代のモンスターマスターが描く異形の怪物ピノキオ

ピノッキオにフランケンシュタインと同じものを見たデル・トロ監督のいくつになっても全くブレないクリーチャー愛が炸裂。

完全に化け物として描写される不死の身体を持ち、嘘がつけないピノッキオの冒険を通して生きることの意味や人間らしさを描く。

 

本作はストップモーションのアニメーション作品で、そのクオリティに圧倒される2時間。

戦争で息子を亡くしたゼペットが息子の代わりにピノッキオを作るというとてもシリアスでヘビーな内容なのだが、パペットという表現技法がそこを優しい手触りに中和してくれている。

人形を生きているように動かしてみせるストップモーションという技法そのものが、作品のメッセージ性の強調に一役買っているようにも感じ、目的と手段のどちらかが優先になっていないところが匠の技だ。

 

ピノッキオは人の良心や幸福、戦争の悲劇や家族の愛に触れ、旅の中で徐々に人間になっていく。

そしてファシズムに支配され人形のように生きる人間たちは、人形のピノッキオから何を感じ取るのか。

何十回と映像化されたピノッキオという題材に深いテーマを持たせて再解釈し、このレベルの作品として送り出せるデル・トロの無限大なイマジネーションに惜しみない賛辞を送りたい。

原作と異なる切り口の切ないフィナーレはピノッキオ史、いや、映画史に残る美しさと余韻ではないだろうか。

デル・トロのフィルターを通して見る世界は美しく、そしてとても優しい。

 

大人向けでも子供向けでもない。

年齢も人種も性別も関係ない万人に必要なメッセージが込められた傑作がこの「ギレルモ・デル・トロピノッキオ」なのだ。

こういった作品がアカデミー賞を取ってくれると安心するなぁ。

 

↓ 英語だけどロングサイズのメイキングも圧巻なのでぜひ見てね。

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