ご一緒にこちらの映画はいかがですか?

映画館で働きながら、たくさんの映画と映画を観る人を見つめています。

映画「ゴーストバスターズ フローズン・サマー」(2024)

作品情報

原題:Ghostbusters: Frozen Empire

監督:ギル・キーナン

出演:ポール・ラッド/キャリー・クーン/フィン・ウルフハード/マッケナ・グレイス/クメイル・ナンジアニ/セレステ・オコナー/ローガン・キム/ビル・マーレイダン・エイクロイド/アーニー・ハドソン/アニー・ポッツ/パットン・オズワルト/ジェームズ・アカスター/エミリー・アリン・リンド

制作国:アメリ

上映時間:115分

配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

年齢制限: G

あらすじ

新生ゴーストバスターズとしてニューヨークに越してきたスペングラー家は、ゴースト退治の日々を過ごしていたが街を破壊しすぎてしまい市長から目をつけられてしまう。ほとぼりが冷めるまでメンバーから外されてしまった15歳のフィービーは、公園でゴーストの少女と知り合う。同じ頃、骨董品屋を営むスタンツ博士の元に強大な力を持つゴーストが封印された呪物が持ち込まれる。

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これぞ気楽な娯楽映画 ゴーストバスターズはこういうのでいい

卒業の季節で人がごっそり入れ替わる季節。

新人採用と教育とその他諸々が忙しくて死にかけている映画館の人です。

どうして毎年スタッフのレベルがリセットされるこの季節に必ず「名探偵コナン」という一年で一番映画館が混む作品が来るのでしょうか。

毎年一番ハードな春が今年もやってくる。

 

さて、そんな春先に似つかわしくない映画が公開されました。

夏を取り戻すためにバスターズが戦うという、夏にやれよみたいな内容の新作「ゴーストバスターズ フローズン・サマー」です。

「フローズン・サマー」は「ゴーストバスターズ2」から32年ぶりの続編として制作された「ゴーストバスターズ アフターライフ」の続編。

「アフターライフ」のジェイソン・ライトマン監督は父アイヴァン・ライトマンからこの偉大なフランチャイズを引き継いだ。

コメディの名手たる父親とは違い、大人向けなヒューマンドラマ映画を撮り続けてきたジェイソン・ライトマンだったが、彼は父と二人三脚でアメリカの伝説的フランチャイズを見事に復活させた。

それも、彼の得意分野であるヒューマンドラマの側面を出しながら、見事なフィルムに仕上げている。

今回は共同脚本だったギル・キーナンと再びタッグを組み、キーナンの方が監督を務めジェイソン・ライトマンは脚本と製作に回っている。

 

前作は情緒ある復活作として天国のアイヴァン・ライトマンとハロルド・ライミスに捧げた見事な傑作だった。(らしくないので微妙という声もあるにはあったが)

一方本作はというと、儀式を済ませ心置きなくいつものゴーストバスターズをやるぜ!という気概に溢れた笑いとアクションに溢れた荒唐無稽の正統派ゴーストバスターズといった感じ。

やはり全作を並べてみると、やはりアフターライフだけがかなり異質な雰囲気を放っているようにも感じる。

 

映画は冒頭からフルスロットルで、ニューヨークを舞台に復活したゴーストバスターズの活躍、天才たる旧メンバーたちの現在の活動、年頃で不安定な末っ子フィービーが直面する困難の数々、2時間ない映画とは思えない盛りだくさんの内容で新旧キャストが所狭しと見せ場を奪い合いめちゃくちゃ面白い。

がしかし、どうにも散漫で一本芯の通った熱さが感じられない部分が致命的でもある。

正直てんこ盛りすぎて全然整理しきれてないし、ラスボスはめちゃくちゃ微妙。

意外と予告編のフローズンサマー状態にならないしサブエピソードは大渋滞。

ラストに全てが集約されるが、ぶっちゃけそこまでうまくもない。

 

とはいえ、フローズンサマーするまでの展開もそれなりに面白い。

「エターナルズ」のキンゴさん、「アンドー」のジェダイのフリする詐欺師、「フライ」のお父さんカモまで最近ハリウッドのあちこちで見かけるパキスタンアメリカ人俳優のクメイル・ナンジアニ演じる新キャラはめちゃくちゃ面白いし、1作目に出てきたウォルターが今回は市長になってまさかのカムバック。

2に出てきた嫌味な市長補佐キャラと合体したような立ち回りでゴーストバスターズを妨害してくるが、あいついい仕事しすぎだろ。

エンジニア部門のメガネのあいつもなんかすごい特徴的でいい見た目とキャラしてたので今後も出てほしい。(吹き替えが芸人らしいのでそれだけ残念)

フィービーと義父との微妙な距離感だけで十分強いエピソードなのに、少女ゴーストの同性愛のようにも見える友情など、もっと絞って掘り下げてたら面白いだろそれ!みたいなところもたくさんあったりする。

とにかく全ての面白くなりそうな要素を浅くさらっと触れていき、細かいツッコミどころを全力疾走で振り切ったら最後はレイ・パーカー・jrの主題歌を流すとなんかすげーいいものを見た気になってくる。

 

前作の涙なくしてみられない"For HAROLD"は一体何だったのか。

これでいいのか???と思う自分と、ゴーストバスターズはこれでいいだろと思う自分のせめぎ合いがすごい。

だが、ポリコレや世の流行りに流されないお気楽娯楽のゴーストバスターズを作ること。

それが天国のアイヴァンとハロルドも一番喜んでくれることではないだろうか?

ゴーストバスターズはこういうのでいいんだよ。

 

ちょっとお客さん少なすぎて次回作とか心配になっちゃうのだが、Ghost Corp (ゴーストバスターズIPを管理する会社)は今後も新作を出す気が満々なように見える。

すっかり大所帯となったゴーストバスターズの底はしれない。

新旧キャストの素晴らしいアンサンブルを生み出せてる貴重な復活IPだし、いくらでも話を作れると思うのでどんどん作ってほしい。

なにより、もうすっかり大人の女性感が溢れてしまい芋オタク少女の役が難しくなってきているマッケナ・グレイスのこの先が見たすぎる。

 

これからも僕に見せてくれ、この少女の成長とゴーストバスターズの未来を。