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映画「あの頃。」(2021)

作品情報

監督:今泉力哉

出演:松坂桃李/仲野太賀/山中崇若葉竜也/芹沢興人/コカドケンタロウ

制作国:日本

上映時間:117分

配給:ファントム・フィルム

年齢制限:G

あらすじ

大学院に落ち、どん底人生を送る青年・劔は、松浦亜弥の「桃色片想い」のMVがきっかけでハロー!プロジェクトにのめり込む。イベントで知り合った個性的な仲間と「恋愛研究会。」を結成し、トークイベントやライブの開催、学園祭での啓蒙活動など、くだらなくも愛おしい青春を謳歌する。しかし、時が流れるにつれて皆アイドルより大切なものを見つけて離れ離れになっていく。

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誰しも持っているだろう、振り返ると見えてくる、暖かく輝いている自分だけの「あの頃」を

同ジャンルに集った仲間とのオタ活に第二の青春を見出す。

そんな幸福な時間が永遠に続くことを願う純粋な気持ちと、否応なく目の当たりにする現実。

少しずつ楽しい時間が終わっていく様が映画の後半に向かって変化していくトーンとシンクロし、それに伴う痛みやなんとなく笑ってやり過ごしていたらいつの間にか過去になっていたあの感じまで、経験の描写力が高すぎる。

 

好きなものが見つかってそこで出来た仲間は一生ものだし、仲間ができることで進める次のステージもある。

アイドルはファンに力を与え、ファンたちは集い居場所を作る。

自らの居場所を見つけた者たちが成長していく姿は、ドルオタに限らず普遍的で万人に当てはまる人生のドラマだ。

 

この映画は「卒業」をテーマに掲げつつ、何かにのめり込んでいた「あの頃。」を否定はしない。

たとえ人生の歩みを進めても、「あの頃。」はいつもそこにいて僕たちの味方でいてくれる。(これと同じテーマを「アイカツ! 10th STORY」で観た)

「あの頃。」を振り返って見えた光景に郷愁や温もりを感じる映画に共感していること自体に、僕は一抹の寂しさを覚えるが、最後まで「自分の好き」を糧に生きていく人であり続けたいと気持ちを新たにすることができる映画だった。

 

妙にオタクの解像度が高いシーンが多くて、ジャンルは違えど身に覚えがありすぎるオタクの姿に共感して気づいたら泣いちゃった。

握手会には行ったことがないが、「『あなたのおかげで毎日楽しいです。ありがとう』が推しに一番伝えるべき言葉だろう」という仲野太賀のセリフ、真理。

なんでそんなシンプルで当たり前のことに今まで気づかなかったんだろう。

本当にその通りで、それしかないと思う。

 

キモオタやらせたら松坂桃李の右に出るものはいません。

カッコいいのに、すごい。

 

 

ところで全然どうでもいいんだけど、「一騎当千」が謎にフィーチャーされてて笑ってしまった。

あれは一体なんだったんだ?

オタクが見た集団幻覚か?