作品情報
原題:Indiana Jones and the Dial of Destiny
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ハリソン・フォード/フィービー・ウォーラー=ブリッジ/アントニオ・バンデラス/ジョン・リス=デイビス/トビー・ジョーンズ/ボイド・ホルブルック/イーサン・イシドール/マッツ・ミケルセン
制作国:アメリカ
上映時間:154分
配給:ディズニー
年齢制限:G
あらすじ
冒険家インディ・ジョーンズの元に現れた旧友の娘ヘレナ。彼女はインディが若き日に発見した伝説の秘宝「運命のダイヤル」の話を持ちかける。人類の歴史を変える力を持つとされる究極の秘宝をめぐってインディはかつての宿敵であるナチスの科学者フォラーと世界を股にかけた争奪戦を繰り広げる。
かつてのファンに別れと感謝を告げる、ハリソンインディ最後の勇姿に胸が熱くなる
面白い映画、好きな映画、すごい映画、これは全て同じではないし、面白いけど嫌いな映画とか好きだけどつまらない映画は存在する。
これは矛盾ではない。
今この感じで大丈夫?と心配になる程、良くも悪くもレトロ映画っぽさがものすごい今回のインディ。
おそらく今回は本気で当時のファン向けに作った、「最新技術を用いた70、80年代映画」という感じだ。(なっち字幕の「スパイがいるかもだ!」も冒頭早速披露される大サービス)
現代映画のスピード感に慣れた若い観客には色々微妙に映るかもしれないが、僕が思うにこの映画のターゲッティングは間違いなく高齢者に絞られてる。
昔の映画のテンポ感で2時間半の尺は無理があるだろうという不安材料は的中してしまった。
過去のインディシリーズも好きだが中弛みが凄い印象なのでそれもまたインディという納得をしているのだが、もっと短くビシッと纏ってたらもうちょっとよかった気もする。
30分の前日譚+運命のダイヤルの2時間で2作品力技で合体させたみたいな構成だったかな?
冒頭でたっぷり見せてくれる若返りパートは凄すぎて言葉にならず、本当に前のめりになって見た。
「ローグ・ワン」あたりから急激に進化し始めた俳優若返り技術だが、AIがあれを学んでどんな人間でも精巧に再現して時代を選ばずどんな演技でもさせられるようになったら。
そりゃ俳優たちもきちんとルールができるまでストライキしますよ。
運命のダイヤルなんてなくても時間を飛び越えて歴史を変えられる技術はもうそこにあるのです。
賛否分かれていたのも気になっていた80オーバーのハリソン・フォードのアクションは意外とどっこいしょ感もなく、激しくもないがきちんとこなせてるように撮れていたのでよかった。
ミステリーやアドベンチャーが姿を消し、科学が台頭する時代に居場所を無くしたかつての英雄の孤独。
ジェームズ・マンゴールドはこういう男を撮るのが本当に上手い。(もっとも、インディを取るにあたっては色を出さずに職人監督に徹した感じはしたけど)
「ハン・ソロ」で若きランド・カルリジアンの相棒ドロイド役だったフィービー・ウォーラー=ブリッジが、今度はまさかの老インディの相棒役という不思議な巡り合わせ。
マッツ・ミケルセンはもっといい悪役にできたと思うが、制作陣が彼を使いこなせなかったように見えて非常にもったいなかった。
かつてスピルバーグの秘蔵っ子で、インディ息子にも抜擢されたがその後色々あってその座を降りたシャイア・ラヴーフの扱いには正直寂しいところがあった。
ハリソン・フォードという圧倒的スターの存在感で観客を映画の魔法にかけながら、そんな大人の事情で時々現実に戻るを繰り返すのでどうにも集中できず、似たようなチェイスシーンやそんなに面白くない潜水パートがやたら長いのも微妙。
でもやたらシリーズのお約束はしっかり拾っていくので、やっぱりどうにも嫌いになれない。
何より、ジョン・ウィリアムズの劇伴が流れてハリソン・フォードの顔面がドアップで映る。
もうこれだけで映画として成立しちゃうんですよ。(最後のロマンスなテーマとかいかにもジョン・ウィリアムズで最高だったでしょ)
この二つがあるだけで及第点の映画にはなれちゃう。
これがスターなんですよ。
色々微妙でもこの二つが揃ってインディのお約束を拾ったらそれはもう「インディ・ジョーンズ」だし、「インディ」を観に来た当時のファンは満足して帰れちゃうんじゃあないでしょうか?
僕が仕事中に話しかけてきた老夫婦は「いやぁすごい映画だったね!懐かしくなっちゃった!今まで観た映画で一番面白かったかもしれない!」と興奮しながらパンフレットを買って行った。
おじいちゃんになったかつてのスターがカムバックして、かつてのファンだったおじいちゃんおばあちゃんたちを元気にしている。
これより幸せな世界ってあるんですかね?
だから僕は映画館で働くのが好きなんだなぁ。