ご一緒にこちらの映画はいかがですか?

映画館で働きながら、たくさんの映画と映画を観る人を見つめています。

映画「マーベルズ」(2023)

作品情報

原題:The Marvels

監督:ニア・ダコスタ

出演:ブリー・ラーソン/テヨナ・パリス/イマン・ベラーニ/ゾウイ・アシュトン/パク・ソジュン/サミュエル・L・ジャクソン

制作国:アメリ

上映時間:105分

配給:ディズニー

年齢制限:G

あらすじ

規格外のパワーを持ち、多くの惑星を幅広く守るため宇宙で活動しているキャプテン・マーベル。そんな彼女を憎み、復讐を企てる謎の敵が出現。時を同じくしてキャプテン・マーベルと彼女に憧れる新世代ヒーローのミズ・マーベル、強大なパワーに覚醒したばかりのモニカ・ランボーの三人に、それぞれのパワーを発動すると居場所が入れ替わってしまう謎の現象が起こる。地球に危機が迫る中、三人は足並みが揃わないチームを結成し悪に立ち向かう。

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ヒーロー映画疲れ?本当にそうなのか

ここ数年、映画館で働く身として感じていたMCUの印象は「繁忙期でなくてもここだけ忙しくなるぞ」だ。

ユニバースとして紐付けられ、作品全てが相互に観客を呼ぶ構図はまさに発明だったし、MCUがあるからとりあえずいくらかの動員は保証されるという認識まであった。

それが「エンドゲーム」で一旦落ち着き、さらにコロナ禍で映画館に急ブレーキがかかった事で一気に流れが変わってしまった。

 

近年の失速具合に「ヒーロー映画疲れ」という言葉がよく用いられる。

確かにDCなど全体を見てまとめるとそうなるのかもしれないが、MCUに絞ってみればそんな事ではなくシンプルに展開がまずかったのだろう。

観客の中にはやはりどうしても「全部見てないとわからないよね」という認識はある。

公式はそう考えてないかもしれないのでドラマシリーズの展開で完全にライト層を振り落としたし、「ホワット・イフ...?」のような今のところ本当に見てなくてもよさそうな作品もある。

「ウェア・ウルフ・バイナイト」に至ってはなんだったんだあれは???

 

今回の「マーベルズ」を見るに、モニカ・ランボーの出自を知るために「ワンダヴィジョン」を見る必要があったかというとそこまでではなかったし、「ミズ・マーベル」だって今回の映画で好きになったら見ればいいくらいのドラマだと思う。

本来ドラマシリーズはそれくらいの位置付けで良かったと思うし、公式もそのつもりで作ってるかもしれないが、観客はどうしてもマストに感じて敬遠し、結局映画からも離れていってしまったのだろう。

まあドラマシリーズの失速は「ノー・ウェイ・ホーム」で最高潮に高まったマルチバース熱の梯子を外してしまった、主にクイックシルバーあたりの判断が間違ってたと言わざるを得ないが。(「ファルコン&ウィンターソルジャー」はまあまあ面白かったし「ロキ」はかなりよかったけどね)

 

他にもフェーズ4だけで18作品(ちなみにフェーズ3は11作品)も展開して新キャラが100人くらい(適当)出てきてよくわからないことになったのも良くない。

フェーズ1で登場した10名ほどをフェーズ2で掘り下げ、フェーズ3で更なる掘り下げと新キャラを投入したペース配分を考えると、明らかに物量を投入しすぎて見る側がついてこられなくなっている。

 

「マーベルズ」はその失速具合が顕著に出たところだと思うが、別に作品はそんなに悪くない。

めちゃくちゃ面白いわけでもないが105分と短くまとまっているので軽い気持ちで観られる。

全体的にゆるいコメディの雰囲気でリラックスしたフューリーを演じるサミュエルは非常に魅力的だし、カマラ・カーンファミリーもかなりいい味を出してる。

クラーケン脱出シーンと入れ替わりアクションはむしろ面白かった。

 

キャプテン・マーベルには最強でいてほしかったので「私だって失敗もするし普通に女の子なんで辛い時もありますが仲間のおかげで頑張れました」という話運びはちょっと嬉しくなかったが、世間的に求められているものを考えたらそうなるよなぁ。

まあいろんなヒーロー映画があるのでたまにはそういうのもあるよね。

ガールズチームアップ作品として本気で女子を取りにいった映画だと思ったので、強くてかっこいいヒーローがどーん!が大好きな男性オタクのワイは黙って見守ります。

 

3人の女性がチームを組む話であの予告の軽い雰囲気なので、女性のエンパワメント映画あるあるのひとつであるドギツイ下ネタやそれに類する会話がありそうで身構えていたが、そういうのもなかったので苦手で警戒していた人も大丈夫です。

あとネコも死にません。

 

200億かかってるとは思えない特殊効果や群衆シーンの安っぽさはどうしてそうなるのかさっぱりわからないが、映画自体は悪くないまずまずの出来なのでヒーロー映画もといMCU凋落の責任を背負わされるのは不憫だ。

ポストクレジットシーンは久々に意味のある匂わせだったが、次回「デッドプール3」でどこまで踏み込むのか。

ちょっと内容が読めた気がするが今から楽しみ。

ただ、来年はその一本しか公開しないらしいので失速が加速しないか非常に心配です。