作品情報
原題:Spider-Man: Across the Spider-Verse
監督:ホアキン・ドス・サントス/ケンプ・パワーズ/ジャスティン・K・トンプソン
出演:シャメイク・ムーア/ヘイリー・スタインフェルド/ブライアン・タイリー・ヘンリー/ルナ・ローレン・べレス/ジェイク・ジョンソン/ジェイソン・シュワルツマン/イッサ・レイ/カラン・ソーニ/ダニエル・カルーヤ/オスカー・アイザック/ヨーマ・タコンヌ
制作国:アメリカ
上映時間:140分
配給:ソニー・ピクチャーズエンターテインメント
年齢制限:G
あらすじ
ピーター・パーカー亡き世界でスパイダーマンを継承した高校生のマイルス。自身の世界に帰ったグウェンと再会した彼は、マルチバースの世界へ足を踏み入れる。そこではミゲル・オハラ(スパイダーマン2099)やスパイダーウーマンなど、選び抜かれた最強のスパイダーマンたちによる組織が世界の均衡を守っていた。やがてマイルスは、愛する人と世界を同時に救うことはできないという、スパイダーマンたちが受け入れてきた悲しい宿命をする。その運命に争うことを決意した時、マルチバース全体を揺るがす事態が起きる。
前作で作ったアニメーションの限界とジャンルの新たな基準を自ら塗り替える
面白いアニメを作るだけで大変なのに、どうやったらこんなすごいアニメを・・・
というわけのわからない感情を覚えたのは僕だけじゃないのではないか。
公開から3週間も経って今更何を言ってるんだと思うかもしれないが、同日公開の「フラッシュ」を見て「マルチバースはもう満足」という気持ちになったり、結構長尺だったりコミック調ビジュアルのCGアニメーションがこの5年で量産されて目新しくなくなったり。
そんな感じでイマイチ腰が重くなっていた。
もし同じ気持ちの人がいたら今すぐ映画館まで観に行ってほしい。
絶対後悔するから。
CGアニメーションで手描きアニメや絵画のようなビジュアル、ディズニーのようなフルアニメーションではなく日本のリミテッドアニメのような2、3コマ打ちのアニメーション。
前作「イントゥ・ザ・スパイダーバース」がこの手法を業界のスタンダードにし、アニメの歴史を塗り替え、アカデミー賞を受賞してから5年。
影響を受けたクリエイターたちによって類似した手法の良質な作品が多数世に送り出されてきた。
もはや珍しくもなくなったこの表現、そしてあまりアガらない予告編。
流石にもう感動しないだろうと思いながら観に行ったのだが、結論から言うとこれは大間違いだった。
もう冒頭のグウェンパートだけでお腹いっぱい。
満足度が高すぎてオープニング流れたらエンディングだと思って帰りそうになるレベル。
本作は半分くらいグウェンが主人公の役割を担っており、前作に比べてだいぶ活躍するしあの可愛さから更にヒロイン度100倍増しでさらに可愛い。
だけどマイルスと相思相愛すぎて感情のやり場に困る。(幸せになってくれ)
前作からして多彩な表現で様々な絵柄を取り入れていたが、今回も水彩画や印象派風、はたまた実写まで、才能あふれるクリエイターたちによる洗練されたビジュアルがもうなんでもありに展開される。
限界を超えたイマジネーションが2時間半このテンションの高さで続くのはちょっと信じられない。
アニメーションが素晴らしいのはもちろんだが、そのポテンシャルを限界まで引き出してるのは音楽と編集。
欲しいと思うところで次の絵が来るし、音楽のタイミングもバッチリ。
映画の流れと自分の思考が完全にシンクロして、泣けるシーンとかでもないのに胸が熱くなり涙の感覚を覚える感動が起きる。
映像作品にも歌でいうところのサビみたいなものがあり、映像、俳優の演技、音楽、編集、すべてのタイミングがバチっとハマった一連の「流れ」で覚えているお気に入りのシーンがきっと皆さんあることだろう。
この映画はそんなシーンがたくさんある、ずっとサビみたいな恐ろしい映画だった。
こちらの想像を軽々超えるパワフルなイメージの奔流。
あの前作がありながら、まだここまで高く飛べるのか。
アニメ作品の...否、映像作品という媒体のクオリティラインを引き上げてしまう問題作だ。