ご一緒にこちらの映画はいかがですか?

映画館で働きながら、たくさんの映画と映画を観る人を見つめています。

映画「フラ・フラダンス」(2021)

作品情報

総監督:水島精二

監督:綿田慎也

出演:福原遥美山加恋富田望生前田佳織里/陶山恵実里

制作国:日本

上映時間:108分

配給:アニプレックス

年齢制限:G

あらすじ

福島県いわき市に暮らす高校生の夏凪日羽は、卒業後に「スパリゾートハワイアンズ」のダンシングチーム、通称「フラガール」の新人採用試験に応募する。未経験ながらも採用となった彼女は、同期のメンバー4人と共に一人前のフラガールを目指し、悩みながらも夢に向かって奮闘する。

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年の瀬に滑り込んできた今年のアニメはこれを見ろオブ・ザ・イヤー

映画館に勤めてしばらく経つが、2021年はアニメ映画豊作の年で様々なアニメ映画が公開された。

大きいものでは「シン・エヴァンゲリオン劇場版」から始まり、毎年恒例の「名探偵コナン 緋色の弾丸」「プリキュア」「クレヨンしんちゃん」、細田監督の「竜とそばかすの姫」やジャンプ漫画の「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールドヒーローズミッション」「劇場版 呪術廻戦0」など。

海外からは「SING/シング:ネクストステージ」「ボス・ベイビー ファミリー・ミッション」「ラーヤと龍の王国」「ロン 僕のポンコツ・ボット」などが来日。

オタク的には「劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト」「劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!」「シドニアの騎士 あいつむぐほし」「EUREKA/交響詩エウレカセブン ハイエボリューション」「FGOシリーズ」「プリズマイリヤ」「アーヤと魔女」「映画大好きポンポさん」「神在月のこども」「100日間生きたワニ」「岬のマヨイガ」「アイの歌声を聴かせて」「JUNK HEAD」「銀魂 THE FINAL」「プリンセス・プリンシパル」「Free!」「閃光のハサウェイ」など熱いものだらけ。

あっ、「抱かれたい男1位に脅されています」「ソードアート・オンライン -プログレッシブ-」「リョーマ!」も観た。

これでも全く網羅できてないのだが、100億円選手の超大作から中規模、ファミリー向け、アニオタ向け、深淵のマニア向け、急に現れた一般向け、政府の賞とか取ってるやつ、なんかバズったけどそんな入らなかったやつ、マイナーなのにバズったやつなど、辞書の「多様性」のところに「2021年のアニメ映画」って入れたいくらいだ。

 

コロナで公開がズレたことも影響し、結果として2021年はありえんくらいアニメ映画が公開され、滞った洋画の穴を埋める役割を担ってくれた。

アニオタはコロナでも関係なく満席の劇場に足を運んでくれたし、自国の映画産業が強い証左でもあるので普通に嬉しかった。

そんなアニメ映画の年となった2021年も終わりに差し掛かった12月3日に公開され、僕の2021年度ベストアニメ映画に輝いたのが「フラ・フラダンス」だ。(やっと本題のタイトルが出た)

 

映画「フラガール」で日本中に知れ渡った福島県いわき市スパリゾートハワイアンズを舞台に、フラダンスを仕事に選んだ少女たちの成長を描いた青春お仕事アニメ。

オタクのみならず大人も子供も楽しめるアニメ映画の最先端の基準として、手本になり得るポテンシャルを秘めた作品だと感じた。

 

見た感覚としては周防正行監督、矢口史靖監督の邦画を見ているような雰囲気でアニメ映画としてはかなり一般ウケも狙える仕上がりになっている。

アニメ的な誇張もありつつ、実写の「フラガール」ファンでも見られるような地に足のついたドラマで見せる絶妙なバランスを保っている。

 

その大きな要因としては、総監督の我らが水島精二監督を筆頭に、キャラデザやぐちひろこ神などほとんど「アイカツ!」シリーズのスタッフで構成されている点があると思われる。

一般にも訴求できる範囲で萌えの要素も入ったちょうどいい絵柄、足を引っ張る悪役もおらずそれぞれの推進力で前向きに物語が進んでいく気持ちよさ、アイカツで培ってます絶対。

その筋のオタクならエンドロールで流れる親の顔より見た名前のクレジットに「あれ?これアイカツか?」となること請け合い。

BNPアイカツ班が勢揃いした奇跡の座組みだ。アイカツ公開前の雑誌イラストとかやぐちさんがだいぶフラの絵柄に引っ張られてたね)(個人的に今現在でオタ非オタ双方に訴求してる絵柄の最前線は平山寛菜さんだと思います)

 

そんな奇跡の座組みに参戦したのが神アニメ請負人の吉田玲子先生。

多くの登場人物の群像劇を脅威の交通整理力でまとめつつ、「けいおん」的な軽妙テンポのゆるふわガールズトークでなごませ、派手な事件や意外性はないが、平凡で当たり前な日常と普遍的な成長の物語に共感し応援したくなる感動が生まれている。

時に画面外で行われたであろうドラマを想像させるところまで、脚本演出共に巧みで自然、素晴らしい出来。

 

明るく軽快なトーンを守ったので余り直接的に描かれていないが、スパリゾートフラガールたちが、この近隣に住む人々が直面した震災の悲劇や、それを乗り越える10年があったという強いメッセージも確かにそこにある。

最近だと「すずめの戸締まり」がそこを更新してきたが、震災描写の距離感は絶妙なところをついてきたと思う。

もちろん震災後に生まれた人が増えてきた中で、風化させないために描写が直接的になっていると思われる「すずめ」のような作品もそういう時代の到来を象徴するようでとてもいいものだと思った。

 

進路が決まらずフラフラした流されタイプの主人公が、フラダンスを通して地に足をつけ居場所を見つける。

ラストの心の底から溢れる真っ直ぐな叫び。

信頼と実績が豊富な水嶋総監督の長年の経験が生きた手堅い以上の秀作が誕生したと感じた映画だった。

 

まあ周囲でそこまで褒めてる人は僕しかいないんですけどね!いい映画なんだけどなぁほんとに!!