ご一緒にこちらの映画はいかがですか?

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映画「マダム・ウェブ」(2024)

作品情報

原題:Madame Web

監督:S・J・クラークソン

出演:ダコタ・ジョンソンシドニー・スウィーニー/セレステ・オコナー/イザベラ・メルセド/タハール・ラヒム/マイク・エップス/エマ・ロバーツ

制作国:アメリ

上映時間:116分

配給:ソニー・ピクチャーズエンターテインメント

年齢制限: G

あらすじ

ニューヨークの救命士キャシー・ウェブは、生死の境をさまよう大事故にあった事をきっかけに、未来予知の能力を手にする。突如覚醒した能力に戸惑うキャシーは、偶然出会った3人の少女が黒いマスクとスーツ姿の謎の男に殺されるビジョンを見てしまい、図らずも少女たちを守ることになる。

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サスペンスというよりはジュブナイルドラマとしての魅力に注目

「ハイキュー‼︎」「ガンダムSEED」が圧倒的な存在感を見せつけ、すっかりアニメに食わせてもらっている環境が当たり前になってしまっている映画業界。

かつて映画業界の救世主となったヒーロー映画もすっかり勢いは落ち着き、なんならピークの高さから近年は何かにつけて厳しい意見を言われる立ち位置になってしまった。

本作も例外ではなく、「最悪の出来」「トマトではあのモービウス以下」なんて言われる始末。

 

だが、果たしてそこまでつまらなかっただろうか?

40点を覚悟して見に行ったら67点の映画が出てきた、くらいの感じで決して素晴らしい出来ではないが、酷評される理由は正直わからない。

僕は「映画」としての魅力が何かしらあればいいのだが、やはりかつての「ヒーロー映画」を求める顧客はそうでもないのだろうか。

今作で僕が見出した魅力はヒーロー映画でもミステリーサスペンスでもなく、「フレッシュな女優たちの魅力を切り取り結束と成長を描いたジュブナイルフィルム」だ。

 

細かいツッコミどころはたくさんあるし、中盤は低予算ホラー映画みたいでクライマックスはかなり巻き気味だった。

ヴィランの動機が弱くてマーベル初の本格ミステリーという割にサイコサスペンスっぽい何かくらいにしかなれてないジャンル映画としての弱さも感じるが、つまらないと断じる程ではなくちゃんとそこそこ面白い。

MCUが確立した巨大ムーブメントになる前の懐かしいヒーロー映画黎明期を知らない人には満足できないのかもしれないが、僕はなんだか懐かしい気持ちにもなった。

 

大人になりきれない大人だった主人公キャシーが、人種も性格も全く違う3人の少女の庇護者となることで特殊能力と人間性を成長させる物語は王道だし、血のつながった家族との関係性が希薄という共通点を持つ4人が徐々に信頼を深め、キャシーを中心とした疑似家族としてチームアップするドラマは十二分に熱い。

その行く末がX-MENみたいなスーパーヒーローファミリーという設定が唯一この映画のジャンルを「ヒーロー映画」としている部分か。

ポリコレやフェミニズムを意識しつつそこまで説教臭くないバランスはお見事だし、監督キャスト共に女性で構成されたからこその仕上がりになったようにも思うが、その座組み故にアツいコミック映画としての熱気を上げきれなかった理由とも推察される。(女だからこそ撮れるとか逆に撮れないとか性別偏見バリバリの事しか書いてないが、正直な気持ち・・・)

派手なアクションは少なく、女性たちの成長曲線を描くことが主題になっているので、その点がヒーロー映画の顧客と相性が悪かったのかもしれない。

 

学校なら絶対に絡まない様なタイプの全く違う3人の女の子たちがぎこちなく会話し、少しずつ仲良くなっていく過程がとてもリアルで魅力的なのも良い。

トランスフォーマー 最後の騎士王」からかなり成長したイザベラ・メルセドの姿が感慨深かったり、「ユーフォリア」でブレイクしたシドニー・スウィーニーの魅力に気づいてしまった界隈からその圧倒的なセクシーボディの動画像がSNSに一生流れてくるようになったり、素晴らしい若手女優の魅力を収めたという点で既に映画としての価値は果たされた。

主演のダコタ・ジョンソンもスタイルが良く美人なので、映画としてしんどいところがあっても役者たちの魅力で116分くらいなら走りきれてしまう。

 

キャシーが成長して少女たちのメンターとなり、4人の女性がチームとして完成していく物語はアメコミ要素を抜いても共感度が高く面白い。

演出は丁寧なものの雑な脚本とカット割、編集の弱さで役者や真価を微妙に発揮できてない感があり、何より顧客と作り手の間に求める物の乖離があった事が一番大きいように感じるが、酷評を鵜呑みにして見逃すのはもったいないスパイダーマンスピンオフ系映画だったと思う。

そして何より00年代映画っぽかった。

 

最近はバズり目当ての絶賛か酷評に評価が二極化する傾向を感じるが、その間にいる「そこそこ面白いかな」「つまらなくはなかったよ」という声をあげない人々こそマジョリティだという事を映画を観る側も作る側も忘れてはいけないと思う。

映画の評価は自分で観て決めよう。