ご一緒にこちらの映画はいかがですか?

映画館で働きながら、たくさんの映画と映画を観る人を見つめています。

映画「僕らの世界が交わるまで」(2024)

作品情報

原題:When You Finish Saving the World

監督:ジェシー・アイゼンバーグ

出演:ジュリアン・ムーア/フィン・ウルフハード/アリーシャ・ボー/ジェイ・O・サンダース/ビリー・ブルック/エレオノール・ヘンドリックス

制作国:アメリ

上映時間:88分

配給:カルチュア・パブリッシャーズ

年齢制限: G

あらすじ

DVから逃れてきた人々の保護シェルターを運営する母エブリンと、ネットのライブ配信で人気を集める高校生の息子ジギー。社会奉仕に身を捧げる母とフォロワーのことで頭がいっぱいの息子は、お互いのことをわかり合えずすれ違ってばかりだが、各々がないものねだりの相手に引かれて空回りするという、親子そっくりなところもある。そんな二人がとある出来事で少しずつ変化していく。

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痛い親子の解像度が妙に高い(特に母親)

ソーシャル・ネットワーク」「ゾンビランド」等の主演作が有名なジェシー・アイゼンバーグの初長編監督脚本作品。

社会奉仕が生きがいの母親と、Youtubeで自作の曲を演奏し投げ銭をもらうのが楽しい息子のすれ違いや葛藤を描く。

 

雰囲気的にダメ息子を見捨てない母親の映画かと勝手に思っていたが、似たもの同士の親子がどっちも同じ感じでしくじる映画だったので笑ってしまった。

息子は音楽と金とフォロワーの事しか頭にないけど純粋で悪い子ではないし、どちらかというと自分の正義に酔ってる感じになってしまっている母親の方がヤバい。

息子に対する不満を解消してくれる保護少年のくだり、スペイン語とかレストランのシーン。

そんなつもりではないだろうが、無意識に息子や同じ年頃の少年の見方が「異性」になってしまっている母親の「あの感じ」の描写が妙にリアルで生々しい。

職員に話しかけたら解雇の前振りと思われたり、妙にあのお母さん周りのキャラ描写がやけに行き届いている。

 

後半に至ってはお母さんが怖くてサイコキラーのスリラーを見てるような気分になってきて、これいい感じの音楽鳴ってるけど演出的にあってる???大丈夫???と心配になった。

とかく中年女性の解像度が高くて怖い。

息子パートではその母親に重ねるようにアメリカの独善的な部分を批判するエピソードを入れたり、息子と母親が同じように空回りする様子をジャンプカットで交互に見せたり、ドラマの描写は丁寧。

意識高い女の子たちとノンポリである主人公の衝突も今どきの学生っぽいかも。

 

キャラクターの身につけるものや使う道具に至るまで意識が行き届いているし、話も演出も綺麗にまとまっているが、逆に作劇が綺麗過ぎて鼻につくところがある。

脚本家大会で賞を取ったらフジテレビの深夜に放送される短編ドラマ化!みたいな企画に応募されてる作品、みたいな感じ。

 

映像やつなぎ方には拙さを感じる部分が時々あったけど、ジュリアン・ムーアとフィン・ウルフハードの役にハマった演技がとても良かった。

家で本を読みご飯を作るお父さんのポジションが非常に美味しい。

ゆるくいい感じの映画でした。