ご一緒にこちらの映画はいかがですか?

映画館で働きながら、たくさんの映画と映画を観る人を見つめています。

映画「ヴァチカンのエクソシスト」(2023)

作品情報

原題:The Pope's Exorcist

監督:ジュリアス・エイヴァリー

出演:ラッセル・クロウ/ダニエル・ゾヴァット/アレックス・エッソー/フランコ・ネロ/ローレル・マースデン

制作国:アメリカ・イギリス・スペイン合作

上映時間:103分

配給:ソニー・ピクチャーズエンターテインメント

年齢制限:PG12

あらすじ

1987年7月、サン・セバスチャン修道院ローマ教皇直轄のエクソシストであるアモルト神父は、ある少年の悪魔祓いを依頼される。変わり果てた姿の少年が自らの過去を言い当てた事から悪魔に憑かれていると確信したアモルトは、若き司祭のトマース神父と共に修道院の調査を開始する。やがて彼らは、異端審問の記録や修道院の地下に眠る邪悪な魂の存在に辿り着く。

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王道と現代的な描写が絶妙な愛すべきジャンル映画

今、静かに広がりを見せている映画がある。

「オーヴァーロード」「サマリタン」の監督、我らがジュリアス・エイヴァリーの最新作「ヴァチカンのエクソシスト」だ。

なぜそんな話題になってるかというと、やたら日本語ができる本作のプロデューサーが日本のファンにリプを飛ばしまくり日本語ツイートを連発。

「君たちのファンアートを集めてラッセル・クロウに送りました」と呟いて、公式との絡みに不慣れな日本の二次創作界隈を騒然とさせたりしているからだ。(海外では割とある話)

ラッセル・クロウ本人も「俺のお気に入りはこれ!」と呟きまくっているのでノリノリだ。(どれだけ前世で徳を積んだらラッセル・クロウにファンアート見られるんだ???)

 

肝心の映画の内容はというと、2016年に逝去するまで数万回の悪魔祓いを行い、イタリアではお茶の間の有名人として広く知られる実在の神父が元ネタというから驚き。

エクソシスト界では知らぬものはいないであろうレジェンド祓魔師でも死後7年でもうエンタメのネタとして活用されるのか。

 

そんなカトリックの総本山ヴァチカンに仕えるローマ教皇直轄の主任祓魔師(チーフエクソシストという超カッコいい肩書きの神父を演じるのが、とても聖職者には見えない超強面の物理で悪魔をぶっ飛ばしそうなラッセル・クロウだ。(しかも教皇フランコ・ネロ!)

その顔面とは裏腹に意外とコミカルな性格で、バカでかい身体に似合わない小さなスクーターでどこにでも駆けつけ悪魔を祓っていくからいちいち漫画のキャラみたいでキャッチー。

最近は「アオラレ」とか変な映画ばかりで色々心配だったが、この映画ではむしろラッセル・クロウだからここまで持ってこれたというくらいの好演を見せる。

 

医療と科学の進歩で悪魔の存在を信じる人が少なくなった時代という設定がまたよく、そんな若き世代のトマース神父とアモルト神父のバディものとしても面白い。

チーフエクソシストってなんなんだろうね。

仮面ライダー響鬼みたいにシフト制で世界を守っててほしい感じがある。

 

今時珍しいくらい荒唐無稽なストーリーで、大丈夫か心配になるくらい異端審問をヤバい解釈しているエンタメ特化型のジャンル映画なので、「ナイヴズアウト」的にシリーズ化してほしくなった。(多分、チャリンコで現れる古畑任三郎みたいなオープニングになる)

 

やはりエクソシストと言われると思い出すのはウィリアム・フリードキン監督の「エクソシスト」だが、フリードキン監督は神父の没後すぐの2017年に「悪魔とアモルト神父」というドキュメンタリー映画も制作している。

その「エクソシスト」が代表するこのジャンルはどうしてもオカルトとかスピリチュアル系な印象を持ってしまうが、どうもエクソシストや悪魔祓いは実在するらしい。

この動画には本物のアモルト神父が祓ってる時の映像が少し映っている。

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映画公開に合わせて日本のエクソシストの映画感想やエクソシスト業界の興味深いお話も公開されているので、興味があったら探してぜひ読んでほしい。

theriver.jp

 

ここでも語られているように、医療が発展していなかった中世では精神疾患の類は悪魔の仕業とされていた。

それを治そうとするエクソシストはある意味では医者の一種と言えるのかもしれない?

現代においても精神疾患と悪魔憑きの違いは一見してはわからず、劇中のセリフにもあるように98%は精神疾患だが、ごく稀にその人が知らないはずの記憶があったり言語を話したりする不思議な現象が起き、それは悪魔の仕業らしい。

自らの異常を悪魔の仕業として神父に助けを求め、それが聖水をかけて救われるならかけてあげたいという神父さんの優しい気持ちを直接聞いたら、なんとなくオカルトや詐欺みたいな目を向けるのが恥ずかしいような気もしてきた。

 

ラッセル・クロウ演じるアモルト神父も、とある過去の出来事から悪魔祓いを専門にするのでなく、精神疾患や心理学の勉強もしていかなる対象にも適切な対処ができるよう日々研鑽する神父として描かれる。

エクソシスト界隈って思っていたよりスピリチュアルな怪しい世界ではないのかもしれない。

 

正直変な映画がバズっとるから見てみるか〜という気持ちしかなかったので、一体何が新たな知見を得るきっかけになるかはわからないものだなと思いました。