ご一緒にこちらの映画はいかがですか?

映画館で働きながら、たくさんの映画と映画を観る人を見つめています。

映画「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」(2023)

作品情報

原題:Mission: Impossible - Dead Reckoning Part One

監督:クリストファー・マッカリー

出演:トム・クルーズヘイリー・アトウェルヴィング・レイムス/サイモン・ペグ/レベッカ・ファーガソンヴァネッサ・カービー/イーサイ・モラレス/ポム・クレメンティエフ/ヘンリー・ツェーニー/チャールズ・パーネル

制作国:アメリ

上映時間:164分

配給:東和ピクチャーズ

年齢制限:G

あらすじ

IMFのエージェント、イーサン・ハントに課せられた新たなミッションは、全人類を脅かす新兵器を悪の手に渡る前に見つけ出すというもの。そんな中、イーサン率いるチームの前に、IMF所属以前の彼を知る因縁の相手が現れる。

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もはや映画の枠を超えてトム・クルーズという生ける伝説を見に行っているような感覚

観客を楽しませるためなら命も惜しまない、文字通り己の全てを捧げる姿勢でこれまで映画産業の救世主となってきたトム・クルーズ

トムが死ぬまで挑戦をやめないシリーズの路線を継承した最新作で、最近流行りの二部作構成の前編。

 

アクションとドラマのバランス的には「ゴースト・プロトコル」「ローグ・ネイション」が最高傑作と信じて疑わない僕だが、それでも映画スタントの歴史に挑戦するかのようなアクション特化の「フォールアウト」だってもちろん好きだ。

2時間21分という長さの原因が「見せたいアクションが多すぎてカットできない」というまさかの理由。

ほとんどヘリに吊るした荷物をよじのぼるトムのドキュメンタリーと化した映画だったが、本作はその路線をさらに強化している。

 

総尺はシリーズ最長の2時間44分で、今回もまず撮りたいアクションを決めたらそれを撮りながら脚本を書いていくスタイルをとっている。

「現在の状況と次にやることを全部説明する会話シーン」→「アクションシーン」、これを交互に繰り返すスタイルはクリストファー・マッカリー体制になってからさらに強化され、間の会話シーンさえ書き換えればアクションシーンはどんな話にも転用できるように工夫して作られている。

それ自体は上手いとも思うのだが、セリフの応酬が延々続いて展開がもたつくし、俳優の顔のアップばかりで引きの画や計算しコントロールされた面白い映像が皆無なのが弱点。(というか編集に難がある)

アクションシーンも切らないのはいいけど、カーチェイスも殴り合いもとにかく長くて最後の方はやや「まだやるんか」感が出てくる。

まあそれでも2時間44分という尺自体に長くてしんどいという感覚が起こらないのは、それだけ凄い映像が行き着く間もなくお届けされているということなのだろう。

 

他のスパイ映画にない「チームプレー」という持ち味もトムの大運動会っぷりに押されて「ローグ・ネイション」をピークに影を潜めてしまっている上、今回はシリアス路線なのでユーモアもだいぶ削減されていたのは個人的に残念だった。

 

じゃあこの映画は微妙なのか、断じて否。

スピーディーな展開、スリリングで見応えバツグンのアクション。

映画としての楽しみはもちろん、観客を驚かせ楽しませるために人生の全てを捧げるトムの偉業を目の当たりにする喜びがただのアクション映画を見るのとは違う別次元に突入している。

これに関しては映画というよりほとんどスポーツ観戦、オリンピックを見るに等しい。

 

先述の理由から取ってつけたような謎脚本ではあるが、アクションと編集のテンションで全く飽きずに最後まで持っていく。

散々予告で見たパラシュート以外にもスティーヴ・マックィーンを思い出すバイクスタントやクライマックスの列車アクションなど、見どころは尽きない。

ちょっと長くて尻込みするかもしれないが、夏休みに観て間違いない極上のエンタメサマームビーだ。

 

初週はミッションファンが来た印象だが、トップガン的な口コミでどこまで広がれるのか。

 

夏は映画館でトム・クルーズ(映画館スタッフ心の叫び)