ご一緒にこちらの映画はいかがですか?

映画館で働きながら、たくさんの映画と映画を観る人を見つめています。

映画「ボルベール 〈帰郷〉」(2006)

作品情報

原題:Volver

監督:ペドロ・アルモドバル

出演:ペネロペ・クルスカルメン・マウラ/ヨアンナ・コバ/ブランカポルティージョ/ロラ・ドゥエニャス

制作国:スペイン

上映時間:120分

配給:ギャガ・コミュニケーションズ

あらすじ

失業中の夫と15歳の娘パウラを養うライムンダ。ところがある日、パウラに肉体関係を迫った夫をパウラが殺害してしまう。娘を守りたい一心で事件の隠蔽を図るライムンダの元に、最愛の伯母の訃報が届く。葬儀のために訪れた故郷ラ・マンチャで生前わかりあうことができなかった母を思い出すライムンダだったが、ある日、火事で死んだはずの母の面影を窓の外に見る。

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アルモドバル作品に宿る「女性の強さ」

あらすじからクライムサスペンスを想像したが、映画は想像と違う方向へ二転三転する。

コメディかと思ったらしっかりしたドラマ映画の一面を見せたりと、映画の空気感を上手にスイッチするので親子三世代の因果に絡め取られた重たい物語を中和し、押し付けがましくない程よい感動をお届けするよいバランスに仕上がっている。

すっかりスペインの巨匠となったペドロ・アルモドバルの代表作として初心者にも断然おすすめ。

ペネロペ・クルスはスペイン映画に出ている時が一番映えてるが、この監督の映画では特に美しい。

カンヌで受賞したのも脚本賞と女優賞。

理由は観ればきっとご納得いただけるだろう。

 

アルモドバル監督は何十年も前から女性の強い魂や生き様を描く物語を紡ぎ、カメラに収め映画として伝えてきた。

昨今の映画業界にはポリコレの流れに便乗した粗悪な映画が溢れている。

某D社のように人種を混ぜたりバランスをとることに意識が奪われて肝心の映画の質が落ちてるくらいならいいのだが、何かを履き違えて男にも女にも失礼な思想強めの映画すら存在し、時に評価を得てしまうこともある。

だがそんな事を過剰に意識しなくても、女性を中心に据えて性別関係なく誰の心にも届くメッセージを描いた素晴らしい映画はすでに世の中に溢れている。

ハリウッドの映画産業に関わる人には、先人の知からもう少し学んでから映画を作ってほしいと思うことが多々ある。

たくさんの映画が答えのひとつとして、いつでも観られるところに存在しているのだから。