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映画「エクス・マキナ」(2016)

作品情報

原題:Ex Machina

監督:アレックス・ガーランド

出演:ドーナル・グリーソン/アリシア・ヴィキャンデルオスカー・アイザックソノヤ・ミズノ

制作国:イギリス

上映時間:108分

配給:パルコ

年齢制限:R15+

あらすじ

世界最大手の検索エンジンで知られる会社でプログラマーとして働くケイレブは、滅多に人前に姿を現さない社長ネイサンが所有する別荘に招待される。社長はケイレブに女性型ロボットのエヴァを紹介し、搭載された世界初の実用型人工知能に関する不可思議な実験に協力することになる。

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人の認知をリアルに捉え、AIの進化による未来を考えさせられる

SF映画ではよくAIに自我が芽生えたり、本当の感情に目覚めたりする。

実際のコンピューターAIは自我があるように見える動きをするプログラムがされていたりするが、それはある意味プログラムした人の人格のコピーとも言える。

最近は学習型AIなんてものも急激に成長していて、僕が大学でこういう分野の勉強をしていた頃とはもうずいぶんAI周りの認識も様変わりしているようだ。

 

本作はAIの知能テストを行うストーリーだ。

AIの知能テストで有名なのはチューリングテストと呼ばれるもので、被験者に対話相手がAIである事を伏せたまま対話させ、コンピューター相手に会話していると気づかなければ成功、というものである。

エヴァを相手にしたテストは少し趣が異なり、エヴァが機械の体を晒した状態から対話が始まる。

最初はロボコップみたいな見た目で、アリシア・ヴィキャンデルの美貌でギリギリ成り立っている美女ロボット相手に主人公も余裕の構えなのだが、人工皮膚や衣服、かつらを身につけたあたりから認識の境界が曖昧になっていく。

 

次第に主人公はエヴァが自分と逃げたがっていると思うようになり、あのような行動に出てああなってしまう。(ネタバレしてないつもり)

 

この映画の結末が、テストの最終結果が、当時の僕には非常に衝撃的で感動に打ち震えた。

どんなに技術を費やしても機械に感情や心なんて与えることはできず、いかに感情や心があるように自然にな動作を作れるか、ということに過ぎないのだと考えた。

夢物語で人間と手を取り合わないリアルなAI像の映画が出てきたと、これが人工知能の限界でリアルな未来だと本気で思った。

 

ただ、5年前の感想を引っ張り出してきて書いている今も、たった5年でAIを取り巻く環境が変わり、なんだかこの感想が的を得ているのかもわからなくなってきた。

またいちから勉強し直しか。

 

ひとつ間違いないのは、この映画はAIを「ちょっと賢くて人間みたいに見えるロボット」という安直な表現する映画ではなく、人間vsコンピューターというチューリングテストの本質を的確に捉えた上でアート系SFスリラーとして成立させているということ。

そして、アレックス・ガーランドは脚本より映像のセンスが良かったと言わざるを得ないダントツの仕上がりでオスカーまで受賞してしまった隠れた傑作ということだ。