ご一緒にこちらの映画はいかがですか?

映画館で働きながら、たくさんの映画と映画を観る人を見つめています。

映画「ザ・クリエイター 創造者」(2023)

作品情報

原題:The Creator

監督:ギャレス・エドワーズ

出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン/ジェンマ・チャン渡辺謙/スタージル・シンプソン/マデリン・ユナ・ボイルズアリソン・ジャネイ/アマル・チャーダ=パテル

制作国:アメリ

上映時間:133分

配給:ディズニー

年齢制限:G

あらすじ

AIがロサンゼルスで核爆発を起こし、人類との戦争が始まってから10年。AIと味方する人類のゲリラ組織に潜入した元特殊部隊のジョシュアは、そこで出会い結婚した妻を失い国に戻る。5年後、人類を滅亡させる超兵器を作り出した「クリエイター」の暗殺を依頼されるが、その潜伏先には死んだはずの妻の姿があった。彼女を救うため、超兵器の研究所に潜入した彼が見つけたのは、幼い少女の姿をした超進化型AIアルフィーだった。

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ベタベタだけどエモい映画が撮れるオタク、ギャレス・エドワーズ

やばい!これが閑散期だ!

そんなことを毎日言いながら天を仰いで恵みの雨が降るのを待っている映画館スタッフでございます。

繁忙期の貯金を切り崩しながら次の繁忙期までの日数を指折り数える時期ですが、面白い映画、いい感じの洋画は逆にこの時期は増えるのです。

 

先日は公開されたばかりの「ザ・クリエイター 創造者」を観た。

デンゼル・ワシントンの「イコライザー THE FINAL」から続けて息子ジョン・デイヴィッド・ワシントンの映画を観ることになるとは何たる偶然か。

監督は「ローグ・ワン」を手掛けた我らがギャレス・エドワーズ

あれ以来音沙汰がなく、てっきり干されてしまったのではないかと心配していたのだが、狐さんのスタジオで製作にキリ・ハート、脚本クリス・ワイツ、撮影監督グリーグ・フレイザーといった「ローグ・ワン」の座組みでの新作を送り出したのでなんだか安心した。

 

全く惹かれない予告編が心配だったが、始まってみればそんな事はなく一瞬でこの世界に引き込んでくれる見事なアバンタイトルから幕を開ける。

特にタイトルロールの出し方で脳が焼かれたのは久しぶり。

素晴らしい編集でここだけもう一度見たいと思った。

 

特筆して良かったのがギャレスの趣味が爆発したプロダクションデザイン。

製作費が8000万ドル程度とこの規模感のハリウッド映画にしてはお安めと話題になっていたが、それを感じさせない画作りのテクニックでSF映画のコンセプトアート画集を見ているかのような見事な映像に仕上げている。

チベットの雪山に立つ袈裟を着たロボット僧侶は超クールだし、「あなたと戦えて光栄でした!」と敬礼して美しいダッシュで特攻を決める爆弾ロボットG13くんはなんとも微笑ましい。

現実とSFが見事に溶け合ったビジュアルは「第9地区」や「チャッピー」などニール・ブロムカンプ作品を彷彿とさせた。

 

非常にとっつきにくいジャンルの映画で興行も厳しいかもしれないが、内容は非常に感情的な物語でいわゆるAIのSF映画とは違う。

ギャレスはオタク監督だが以外にも演出にも熱さがあり(感動という棒で殴って泣かせるタイプだが、実はそういうの嫌いじゃない)、ブロムカンプよりも非オタ的知り合いに勧めやすい内容なのも非常に良かった。(字幕で言うと非英語台詞の英語焼き付け字幕のフォントを大好きなスターウォーズで使われたものを再現したというギャレスのオタクエピソードも披露されていたのでオタク度は多分重症)

そういう意味では一昔前のオリジナルSF映画企画の再来という感じがして、そこも好ましい。

 

クリストファー・ノーラン的な「愛に関するSF映画」で、おまけに音楽はハンス・ジマー

それってもうほとんど「インターステラー」じゃん。

一昔前なら「全米が泣いた!」とか言われるタイプの映画で絶対日本人ウケは良さそうなのに全然宣伝を見かけなくてもったいないなぁとも思った。

めちゃくちゃ日本語出てくるし、なんなら日本語のテロップが標準搭載で入ってたり、新しい学校のリーダーズの歌が流れたりもする。

 

僕は非常に好きな映画だったが、「ブレードランナー」やそれこそ「ローグ・ワン」を彷彿とさせるところも多々あり、新規性がない焼き直しの駄作とまで言う人もいる。

確かに脚本は力技なところもある(ギャレス曰く「僕は脚本を描くのが大の苦手」)し、演出もベタベタのベタでパワー極振りかもしれない。

だが、この映画は好きかもしれんと少しでも感じているなら恐らく後悔しないので絶対に観に行った方がいい。

結局感想は人それぞれだ。

 

今回来日したギャレス監督は「映画のチケットは投票券。配信や円盤を待たずチケットを買って観る事で、2年後3年後に劇場でかかる映画が決まる。だから自分が好きな映画は迷わず見に行ってほしい」という趣旨の発言をしているが、これは全くもってその通り。

だからこういう映画が好きで今後も劇場で観たいなら、何がなんでも観にきてほしい。

特に中学生は「不用意に観て一生心に刻まれ、大きくなって調べたらそんなに評価されてないし見直したら昔ほど感動はなかったけどやっぱり一番好きな映画」になるタイプの作品だと思うので是非。

僕が中学生だったら多分ヤバかった。

この映画が誰かの、僕にとっての「トランスフォーマー リベンジ」になることを心の底から願ってます。

 

 

2.76:1という珍しい謎アスペクト比については今度映写さんとゆっくり語り合おうっと。