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映画「モスル あるSWAT部隊の戦い」(2021)

作品情報

原題:Mosul

監督:マシュー・マイケル・カーナハン

出演:ヘール・ダッバーシ/アダム・ベッサ/イスハーク・エリヤス/クタイバ・アブデル=ハック/アフマド・ガーネム/ムハイメン・マハブーバ

制作国:アメリ

上映時間:102分

配給:ポニーキャニオン

年齢制限:G

あらすじ

長引く紛争で荒廃したイラク第二の都市モスル。21歳の新人警察官カーワは重武装イスラム過激派組織「IS」に襲われたところをジャーセム少佐率いるSWAT部隊に救われる。カーワがISとの戦闘で家族を失ったと聞いたジャーセム少佐は、カーワをその場で部隊に招き入れる。部隊は少佐を中心に十数名の元警察官から構成され、本部の命令を無視して独自の戦闘を行なっていた。熾烈な戦闘で次々に仲間を失いどれだけ絶望的な状況に直面しても突き進む。その決断の裏には彼らを繋ぐ秘密の使命があった。

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圧倒的リアリティで描かれるイラク内戦の最前線

家族をISに殺されていることが入隊条件となる地元警察特殊部隊の壮絶な戦いを描く。

制作国こそアメリカだが、全編アラビア語で制作されており正義のアメリカ軍も出てこない、イラク人の物語である。

俳優が全員戦闘訓練を受けたというだけあって、かなり細かい動きがいちいち只者ではなくありえん緊張感。

あまりのクオリティに出演俳優のSNSや家族にテロリストから殺害予告が来たというエピソードも納得だ。

 

戦場の乾いた空気感や壮絶な死闘、最前線を追体験できる圧倒的臨場感。

常に死のにおいが漂い、それは突如襲い掛かる。

ただの壮絶なバトルフロント映画ではなく、沈黙や静寂で見せる戦いの虚しさや悲壮感など、演出部分もかなりしっかりしている。

 

ミリタリ的なところでいうと身体に貼り付けた斧で戦ったり、死んだ敵や味方の銃弾はもれなく抜いていく。

背負ったロケット弾が狭いところでぶつからないように抑えながら銃を構えて進んでいくシーンなど、細かい所作がガチすぎてワクワクする。

戦場でも時間がくれば礼拝する描写は本当に映画で初めて見たかもしれない。

 

MCUインフィニティサーガの後半を支えたルッソ兄弟のプロデュース作品であることが全面に押し出されていたが、本当にハリウッドは金を出しただけらしい。

アメリカの存在を感じさせないイラク人の視点を通したイラク人の物語。

ISによる市民の受けた被害と、故郷のために戦う人々の魂がこの映画にはある。

と言いつつ撮影したのはモロッコなのだが、そう感じさせない空気感が伝わる画面をマシュー・マイケル・カーナハンは初監督でこれを作ったの???すごいね。

 

彼らが本部に背き戦い続けた理由がわかるクライマックスの鳥肌、しばらく忘れられない。

この国の未来を託すべきなのは誰かというメッセージも感じられた。

 

予告編の数倍濃い戦闘シーンと意外としっかりした脚本。

隠れたおすすめ作品です。

 

小さい劇場でしかやらなかったので、弊社のデカいところでやりたいなぁと願ってやまない。(そんな趣味みたいな采配は通らないが・・・)