作品情報
原題:Dumb Money
監督:クレイグ・ギレスピー
出演:ポール・ダノ/ピート・デビッドソン/ヴィンセント・ドノフリオ/アメリカ・フェレーラ/ニック・オファーマン/アンソニー・ラモス/セバスチャン・スタン/シャイリーン・ウッドリー/デイン・デハーン/セス・ローゲン
制作国:アメリカ
上映時間:105分
配給:キノフィルムズ
年齢制限: G
あらすじ
2020年、アマチュア投資家のキース・ギルは時代遅れで倒産間近と囁かれるゲームショップ「ゲームストップ社」の株に全財産を注ぎ込んでいた。キースは「ローリング・キティ」の名で動画を配信し、ネット掲示板で同社の株が過小評価されていると訴える。すると、彼の主張に共感した大勢の個人投資家がゲームストップ株を買い始め、21年初頭に株価が大暴騰。同社を空売りして一儲けを狙っていた大富豪たちは大きな損失を被る。この事件は連日メディアを賑わせ、キースは一躍時の人となるが・・・
コロナ禍に巻き起こった「あの狂騒」の再現と記録
あっという間に今年も1ヶ月が過ぎ、もう2月。
映画館的には閑散期と呼ばれる寂しい時期でございますが、「ガンダムSEED FREEDOM」が絶好調で記録的ヒットは間違いなしというありがたい状況であります。
昨年テレビの総集編をワールドツアーと打ち出し見事に40億円も稼いだ「鬼滅の刃」の新たな総集編。
こちらは正直20億いくのか?という滑り出しで勢いの衰えを感じるが、それでも昨年公開した洋画のほとんどより稼げるんだから、頑張って海外から映画を持ってきたり、実写やアニメの映画を一から作ったりしなくても、テレビアニメをつなげた映像を上映した方がいいって配給会社は思うでしょうね。
ただ、映画館はそれでいいのか?
アニメしか儲からなくても映画を諦めていいのか?
アニメで儲かるなら、その分儲からなくてもいい素晴らしい映画を上映し続けるべきではないか。
この魂を失ってはいけないと思うのです。
そんな僕は今日も今日とて出勤前に映画を2本ほど鑑賞。
本作は「ラースとその彼女」「アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル」「クルエラ」と傑作を連発する天才クレイグ・ギレスピー監督の最新作、とあれば観ないわけにはいかないでしょう。
今や時代遅れとされていたパッケージ販売のゲームショップは、コロナ禍の外出規制やステイホームでもはや風前の灯に。
そんな2020年に「いや、パッケージゲームはまだ戦えるだろ」とゲームストップ社の株を買い続け、その様子をYoutubeで配信していたのが本作の主人公キース・ギルだ。
金融映画は面白い反面話が難しい、専門用語などで何が起きてるかよくわからないという問題がついて回る。
本作は下層階級の人々が既得権益者たちを脅かすというわかりやすい縦構造の設定で、騒動の渦中にいる人々の群像劇としてかなりエンタメに振っているので、難しくても面白く観られると思う。
ロックダウンによる世間の閉塞感の再現も見事で、ギレスピーは「ゲームストップ株騒動」だけでなく、「コロナ禍」という異常事態の空気感も併せて映画として記録しておきたかったのではないだろうか。
マスクを演出のギミックとして使い分けるあたりが非常に上手だと感じた。
株価操縦などで訴訟にも発展した本件の主人公をポール・ダノが無邪気な市井のヒーローと化したインフルエンサーとして好演。
「我ら金持ち四天王で奴は最弱」みたいなポジションの成金を、コメディとシリアスの絶妙なバランスで見せるセス・ローゲンが、コロナ禍の激務の中で株を買う看護師をアメリカ・フェレーラが、ゲームショップの店員アンソニー・ラモス、鼻マスクが気になって仕方ない店長デイン・デハーンとまあ妙に豪華で観ていて楽しい名バイプレイヤーたちのアンサンブルも見どころだ。