作品情報
原題:CODA
監督:シアン・ヘダー
出演:エミリア・ジョーンズ/トロイ・コッツァー/マーリー・マトリン/ダニエル・デュラント/フェルディア・ウォルシュ=ピーロ/エウヘニオ・デルベス
制作国:アメリカ・フランス・カナダ合作
上映時間:112分
配給:ギャガ
年齢制限:PG12
あらすじ
海の街で両親と兄と暮らす高校生のルビーは、家族の中で唯一の健聴者。幼い頃から家族の耳となり家業の漁業も毎日手伝う彼女は、入部した合唱クラブの先生に歌の才能を見出される。先生は都会の名門音大へ進学を勧めるが、耳の聞こえない両親は反対する。夢を追うよりも家族を支える決意をするルビーだったが・・・
万人の胸に刺さるであろう、世界の映画賞総なめも納得の感動作がなんと早くも金ローで放送の衝撃
両親と兄に聴覚がない聾唖者一家で育った唯一の健聴者である女の子の青春音楽ドラマ。
タイトルにもなっている「コーダ」とは聾唖者の親を持つ子供(CODA, Children of Deaf Adults)の略であり、楽曲の締めくくりを意味する音楽用語でもある。
原作は「エール!」というフランス映画で、この映画はそのリメイク版。
あちらは家業が漁師ではなく農業だったり、兄ではなく弟だったりするがあらすじは全く同じ。
重低音を鳴り響かせるジャンルの音楽を鳴り響かせた車でのお出迎え、性に奔放な両親の描写や性病の検査に行くシーン、涙無くしては見られないあの発表会のシーンなど、「コーダ」で評価されていた要素はほとんど既に存在している。
こちらにしかない要素としては農業の事業計画がうまくいかず、市長選に出馬する障碍者の政治参加描写があったりする。
去る2023年6月16日、世間が「アクロス・ザ・スパイダーバース」や「ザ・フラッシュ」で沸き立つ日の夜に、映画放送テレビ番組の老舗「金曜ロードショー」で本作が放送されたことには大いに驚かされた。
僕は(何故か)金ローが放送した作品の記録をつけることを趣味にしているのだが、番組の長い歴史を見ても「コーダ」のような作品を放送することはかなり異例だと感じた。
話は逸れるが、洋画をたくさん放送していた金ローには2012年頃から2021年までの9年間、ジブリかハリポタか映画ですらない特番しかしない闇の時代があった。
それが2021年からは担当者が良くなったのか、構成が打って変わり以前のように洋画をたくさん放送するようになった。
特に直近の1、2年は〇〇特集のような企画を組んだり80年代名作を集中的に放送したり、金ロー吹替版の発掘放送や新録吹替版制作というテレ東のお株を奪い去るまでに激変している。
さて、今回の「コーダ」放送の何が異例に感じたかというと、昨年上映されたばかりのアカデミー賞作品賞を受賞したタイトルを早速放送というのがだいぶ珍しい。(それこそ2021年に「パラサイト」も新録吹替で放送している、が...)
しかも、内容は障害者一家のドラマで映画の大半が手話で構成されるという硬派な作り。
そして、吹替版放送でも字幕のセリフがかなりの部分を占めるという、金曜ゴールデンタイムにお茶の間に流すのはなかなかストロングスタイルな作品だ。
間違いなく感動できるいい映画なのでそういう層に見てほしいのは間違いないが、これを敢行するのはなかなか大変だったのではないだろうかと思いを馳せた。
現在の体制になってからの金ロー担当者さんのインタビューは幾つか目にした事があるが、この調子で僕らの金ローを盛り上げて行っていただきたい。
僕はこの映画を勤め先では上映しなかったので近所の映画館で観た。
前年は「ノマドランド」、その前は「パラサイト 半地下の家族」が受賞しており、渋い映画が受賞する流れだったので正直オスカーを取るとは思っておらず、かなり嬉しかった。
劇場側としては、こういうわかりやすく万人受けする感動作が受賞してくれる方が客足にも繋がるのでありがたい。
「ノマドランド」みたいな素晴らしいが小難しい映画が作品賞を取ると、観てもよくわからない人の低評価レビューで映画のイメージが悪くなるし、そうなると結局客足も伸び悩むので双方いい事なしなのだ。
この映画は何にもないがいい雰囲気の田舎町を美しくカメラにおさめ、漁船や水産加工工場の質感から魚のにおいが漂ってきそうなほどリアル。
ユニークで生き生きとした登場人物たちは人間的に魅力的で考えさせられるストーリーがそれぞれにある。
特に主演のエミリア・ジョーンズの美少女ヒロインっぷりはまさに映画的だし、トロイ・コッツァーの顔と手で魅せる見事なお芝居は文句なしのアカデミー賞級。
初めてオスカーを受賞した聾唖者俳優という話題を作りたかったアカデミーの段取り通りなんて誰にも言わせない圧巻の演技だ。
舞台人物共に非常に立体感のある見事な作り込みで、タイトルまでダブルミーニングになり、劇中歌われる曲も映画のテーマを雄弁に語る。
リメイク元と同じ物語でありながら独自の映画に昇華させ、アカデミー賞では脚色賞を受賞した監督のこだわりが細部まで行き届いた、光り輝く宝石のように美しい映画だ。
せっかくなので映画館の話をすると、映画館でも目や耳の不自由な方は結構いらっしゃる。
音は物理的な衝撃波でありそれを身体で感じることを楽しむ描写が「ベイビー・ドライバー」にあったが、そういった物を楽しみに来てくれているのだろうか。
字幕付き映画を家で見るのと、大型スピーカーから放たれる音圧を感じながら観るのとではかなり印象も違うのだろう。
上映前に流れる「UDcast」の映像を見た事がある人はご存知だろうが、今はスマートフォンがあれば目や耳が不自由でもアプリを使ってバリアフリー上映を楽しむ事ができる。
もし映画館で隣の人がスマホを使っていても、イラッとする前にそういったアプリを使用している人かはとりあえず確認していただきたい。(たまにトラブるので)
僕は「ヒーリングっど♡プリキュア」の映画で「プリキュア5」のオリジナルボイスドラマが聴けるという施策でUDcastを使った事がある。
アプリを起動してイヤホンを付けると、映画に自動で同期して音声が流れる仕組みだ。
映画館の音は大きいので、映画の音を聴きつつ映像も観ながらイヤホンから流れる音を聴くのは結構大変だった事を今でも良く覚えている。
この記事、全然映画の話してなくてなんかすいませんね。
次回はちゃんといつもみたいな記事を書くぞ。
ていうか「スパイダーバース」のエントリーも作成したいので、仕事に区切りをつけて早く観ないとね・・・