作品情報
原題:Glass Onion: A Knives Out Mystery
監督:ライアン・ジョンソン
出演:ダニエル・クレイグ/エドワード・ノートン/ジャネール・モネイ/デイヴ・バウティスタ/キャスリン・ハーン/レスリー・オドム・Jr./ケイト・ハドソン/ジェシカ・ヘンウィック/マデリン・クライン
制作国:アメリカ
上映時間:139分
配給:Netflix
年齢制限: G
あらすじ
IT企業の大富豪マイルズ・ブロンが地中海のプライベートアイランドに親しい友人を招待し、ミステリーゲームを持ちかけるが、その中で実際に殺人事件が起きてしまう。楽しいゲームは一転して恐ろしい事件となり、参加者は全て容疑者に。友人同士で交錯する思惑や裏に隠された真相を探り合う、その中になぜか誰とも交友関係がないはずの名探偵ブノワの姿があった。風変わりな名探偵ブノワ・ブランが絶海の孤島で殺人ミステリーに挑むライアン・ジョンソンのオリジナルミステリー第2弾。
現代に蘇る正統派推理作品シリーズ
コロナ禍に時間を持て余してAmong Usに興じるブノワ探偵(ちなみに下手くそ)が、まんまAmong USっぽい殺人謎解きゲームに参加するシリーズ第2弾。
よく「最後のジェダイ」が叩かれるライアン・ジョンソンだが、やはりオリジナルをやらせたらその才能は天下一品。(ていうかシークエルもカジノ組のシーンを除けば8が一番おもしろかっt)
王道を極めて研ぎ澄ませた圧倒的安心感のミステリー。
前作は第一幕と第三幕がミステリー、第二幕がサスペンスというジャンルを転じながら魅せる巧みな脚本で見事に観客を欺いた。
今回も趣向は違えど、二転三転する展開にもれなく全員怪しい登場人物たちがドラマをしっかり盛り上げる。
名探偵ブノワの変人切れ者っぷりや人間臭さが本シリーズの魅力を余すとこなく詰め込んだ2時間20分。
主演のダニエル・クレイグも大いに楽しみながら演じているし、ジャネール・モネイとエドワード・ノートンも非常に美味しい役どころで見ていて面白かった。
少し話がややこしく分かりにくいところもあったが、それすらも監督の仕組んだ術中。
前作ほどの打ち震えるような感動はなかったが、それでも波の映画監督と作品では追いつけない独自のステージにある映画なのは間違いない。
古典から着想を得つつ、しっかりとオリジナルの探偵シリーズを作り上げていくライアン・ジョンソンはもっと評価されていいと思う。
今時この純度の高さで娯楽ミステリー映画を作る姿勢には信頼しかない。
日本で劇場公開が見送られてしまったことは大きな機会損失として嘆くしかないが、いつかどこかの映画館で1と2でセット上映などをしてほしいものだ。
それともうひとつ残念なのは、これは監督も言及していたが、タイトルの付け方。
第1作目が「ナイブズ・アウト」で第2作目が「グラス・オニオン」というタイトルにしているのは明らかに古典ミステリー小説を意識した名づけになっている。
だがシリーズだと分かりにくいと判断されたのか、タイトルに「ナイブズ・アウト」をつけざるを得なかったのだ。
ホームズで言ったら「緋色の研究:バスカヴィル家の犬」とされるに等しい愚行ではないのだろうか。(コナン・ドイルが続編に"A Study in Scarlet Mystery"なんてつけるだろうか?)
そこを理解できる人がNetflixにいなかったのはあまりにも致命的だが、さらに邦題は「ナイブズ・アウト:グラス・オニオン」にしてしまったので本当にもうどうしようもない。(ポスターはどちらもナイブズ・アウトが少し小さめにデザインされてはいるが)
何にせよ、主人公が次第にすり替わるところや、探偵の推理や種明かしパートが監督の脚本術の解説っぽくなっているところも面白く、素晴らしいフランチャイズを立ち上げたことは間違いない。
第三弾の製作も決まっているという事で、今後も大注目です。