ご一緒にこちらの映画はいかがですか?

映画館で働きながら、たくさんの映画と映画を観る人を見つめています。

映画「リバー、流れないでよ」(2023)

作品情報

監督:山口淳太

出演:藤谷理子/鳥越裕貴/永野宗典/角田貴志/酒井善史/諏訪雅/石田剛太/中川晴樹/土佐和成/早織/久保史緒里/本上まなみ近藤芳正

制作国:日本

上映時間:86分

配給:トリウッド

年齢制限:G

あらすじ

京都・貴船の老舗料理屋「ふじや」で仲居として働くミコトは、別館裏の川のほとりに佇んでいたところ、2分で時間が巻き戻るタイムループに巻き込まれる。番頭や仲居、料理人、宿泊客たちもみな同じ時間をループしており、2分経つと全員が記憶を引き継いだまま元いた場所に戻ってしまう。人々は力を合わせてタイムループからの脱出を目指す。

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1ターン2分しかない地獄のタイムループ

夏休み、来たる10年ぶりのジブリ宮崎駿の新作にビビり準備に励む日々だったが、うっかりU-NEXTのポイントを消し飛ばしかけたので慌てて一本観てきた。

オタクには「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」「ペンギン・ハイウェイ」でお馴染みの上田誠が原案と脚本を担当した、氏の主宰する劇団ヨーロッパ企画の劇場作品第二弾。

1ターン2分しかない超細かいタイムループにという設定に「これでどうやって話を進めるんだ?」と素直に気になったので確認するため映画館に向かった次第だ。

 

結論から言うと、そのまんま2分のループを30回以上繰り返して86分の映画になっている非常にシンプルな映画だった。

時の牢獄に閉じ込められた人々は記憶も引き継ぐので、2分のうちにできることをやって話を少しずつ進めていく。

あまりにハイペースに繰り返す展開は、全く飽きないとは言わないが意外とそこまで飽きずに観てられる。

強いて言うと2分ごとに展開があるわんこそばみたいなペースなのでちょっと疲れたくらいだろうか。

 

記憶を引き継ぐのも良し悪しでゆるっと休むターンもあったかと思えば、時間は戻っても人間関係は戻らないのでヒヤヒヤする展開があったり。

イムループも宿の従業員と客が揃ってドタバタする様子も映画ではもはや使い古された手法だが、2分ループというあまりない飛び道具を使って見せてくれる。

2分のループ中は必ずワンカットで撮り続けるので没入感があるのだが、映画っぽい編集があるのはループの前後だけなので、なんだか映画というより舞台劇を見ているような気分になった。

ひとり妙に人間離れした女の子がいたが乃木坂のアイドルだったらしく、その周りから浮いてしまうビジュアルがちゃんと作劇に意味を持たせてあったところには「おっ」となった。

 

SFっぷりを楽しむと言うよりは、ループの中で人々が自らと向き合い人生を前に進めるドラマを展開するのが見どころ。

脚本で見せたる!ってところが劇団映画って感じだった。

僕が観た劇場はそうでもなかったが、よそでは満席になったり舞台挨拶が決まったりするなど、どこか「カメラを止めるな」を思い出す口コミによるバズりの波に乗っているらしい。

あの映画の時はなんとなく観に行ったら満席で、脇役のお兄さんのゲリラ舞台挨拶があったり日本のミニシアター作品という世界を垣間見た思い出がある。

国内の大手ではない小さな作品がその規模感以上に盛り上がっているのを見ると、収益だけじゃない目に見えない種まきが始まっているような気がしてなんだか嬉しくなる。