作品情報
原題:Anatomie d'une chute
監督:ジュスティーヌ・トリエ
出演:ザンドラ・ヒュラー/スワン・アルロー/ミロ・マシャド・グラネール/アントワーヌ・レナルツ
制作国:フランス
上映時間:152分
配給:ギャガ
年齢制限: G
あらすじ
人里離れた雪山の山荘で転落事件が発生。唯一の目撃者は視覚障害を持つ11歳の少年で、母親は救助を要請するが、転落した父親はすでに息絶えていた。当初は自殺と思われたが不審な点も多く、前日に夫婦喧嘩をしていたことなどから妻でありベストセラー作家のサンドラに嫌疑がかけられる。裁判が進む中で夫婦や家族の中に隠された秘密や偽りが暴かれていく。
法廷ものかと思いきや、男女の関係性についての深い話
最近調子がいいのか、お仕事忙しいにも関わらず今年に入ってから映画を既に32本鑑賞した。
まあまあのペースかと思っていたが、これを維持してもここ一昨年や3年前の300本超え鑑賞には届かないので、自分がどんなペースで映画を見ていたのかさっぱりわからなくなっている。
ヴィクトル・エリセの新作もリバイバル含めて完走できたが、ちっちゃいミニシアターでほぼ毎日行ってたからそろそろ顔を覚えられてそうな気がしなくもない。
そんな連日通いの中でなんとなく時間があったので鑑賞したのがこちら。
「落下の解剖学」はアカデミー賞の監督賞と脚本賞にもノミネートされているフランス映画。
外国語映画賞には以前書いたこともある「ポトフ」が選ばれたが、それは監督によるマクロンへの批判的演説が原因だとかなんとか。
それでも選ばれるところには選ばれるんですね。
映画はテレビや媒体でもしばしば「法廷劇」とされているが、どちらかというと法廷を舞台にしているだけで「マリッジストーリー」のような男女の関係性のドラマだった。
なのでスッキリとした爽快感を期待していくと梯子を外されるし、むしろ今年一番解釈を巡って他人と白熱できる映画だろう。
疑いの目を向けられる主人公は仕事で成功しているが家族を顧みない、浮気をしている、喧嘩して感情的に暴れるなど、ヘイトを溜めやすそうなキャラとして描かれる。
だが、これと同じことを旦那がしていたとしても、よくいるちょっとヤバい男性キャラクターにしかならないように思える。
こういったいわゆる男性だったらよくありそうな要素を女性が持った時、果たして社会は彼女を世の男性と同じような目線で見られるのか。
男だったらいいけど女にそれをされるとイラっとしませんかと問いかけるような。
そんな実験的な試みを説明なく最初から最後までやり切ってしまった恐ろしい映画だった。
僕には非常に新鮮な感覚で、いいものを見ました。
主人公の古い友人である弁護士がいい味出たおじさんすぎて最高なので、そこは要チェックです。