ご一緒にこちらの映画はいかがですか?

映画館で働きながら、たくさんの映画と映画を観る人を見つめています。

映画「アナザーラウンド」(2021)

作品情報

原題:Druk

監督:トマス・ビンターベア

出演:マッツ・ミケルセン/トマス・ポー・ラーセン/マグナス・ミラン/ラース・ランゼ/マリア・ボネビー

制作国:デンマーク

上映時間:115分

配給:クロックワークス

年齢制限:PG12

あらすじ

冴えない高校教師のマーティンと3人の同僚は、ノルウェーの哲学者が提唱した「血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなる」という理論を証明するために実験をすることになる。朝から酒を飲み続け常に酔った状態を保つと、授業も楽しく生活が生き生きとし始める。仕事もプライベートも上手く回り始めたと思われたが、実験が進むにつれて次第に制御が効かなくなっていく。

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これを観て酒を飲みたくなるか、戒めと取るか

今や世界的スターとなった北欧の至宝マッツ・ミケルセン

ハリウッドだけでなく地元デンマークの映画にも出続けてくれるので、僕は彼のそういうところが大好き。

強火のファンが多いマッツの出演作は当然職場でも話題で、「めっちゃ酒飲みたくなるから観て!」と言われ「僕は下戸なんだよなぁ」と思いながら観に行った思い出がある。

確かに酒を旨そうにガバガバ飲むし、オシャレなお店や綺麗に注がれる酒の映像、酒のCMのような美しい音にこだわりを感じた。

しかし、僕の目には飲酒による一時的な高揚感は何の解決にもならず、むしろやりすぎると人生も家庭も壊すという戒めをキチンと提示し、「酒は飲んでも飲まれるな」を直球でぶつけてくる映画に映った。

 

こんな実験を本気でやるなんてどこの国も男子ってバカねっていう気持ちと中年の危機を前に焦るおっさんたちの切実さが同居してるのがとても上手。

主人公たちの揺れ動く心と飲酒による焦点ズレやふらつきがシンクロする演出表現も良。

 

ただこの映画は飲酒自体を肯定も否定もしていない。

酒の持つデメリットから目を逸らさずに、たまにはハメを外して楽しむことの大切さも伝えてくれる。

受け手に結論を委ねたユニークな問いかけ映画だ。

 

僕にはダンス予告とグレーの空をめちゃくちゃ加工して綺麗な青空にしたポスターに詐欺の匂いを感じてしまうほろ苦い映画だった。