ご一緒にこちらの映画はいかがですか?

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映画「ナポレオン」(2023)

作品情報

原題:Napoleon

監督:リドリー・スコット

出演:ホアキン・フェニックスヴァネッサ・カービー/タハール・ラヒム/マーク・ボナー/ルパート・エベレット/ユーセフ・カーコア

制作国:アメリ

上映時間:158分

配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

年齢制限:PG12

あらすじ

18世紀末、革命の混乱に揺れるフランス。若き軍人ナポレオンは目覚ましい活躍を見せ、軍の総司令官に任命される。ナポレオンは未亡人のジョゼフィーヌと結婚し溺愛するが、奔放なジョゼフィーヌは他の男とも関係を持ち夫婦関係は奇妙にねじ曲がっていく。一方で英雄としてのナポレオンは快進撃を続け、クーデターを成功させ第一統領に就任、遂にはフランス帝国の皇帝にまで上り詰める。政治、軍事のトップに立ったナポレオンは戦争にのめり込み凄惨な侵略と征服を繰り返すようになる。

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戦場の壮大なスペクタクルと女性の前での一人の男の落差が凄い

英雄か、悪魔か。

という前振りで映画の軸をジョゼフィーヌに持ってきた、ハリウッドの強い女性キャラ開拓者の一人リドリー・スコット

86歳とは思えないスピード感で映画を作り、そのひとつひとつのクオリティの高さたるや。

スコセッシやイーストウッドのような円熟感とは違い、未だ野心的に感じる映画を撮り続けているのは出自の違いだろうか。

 

これほど有名になりながら俳優のイメージが役を上塗りしないホアキン・フェニックスの見事な演技。

ジョゼフィーヌというナポレオンに対峙する女性を演じるにふさわしい存在感を見せたヴァネッサ・カービー

最近多言語な映画が増えたせいか、何故か今作に関しては全編英語セリフがものすごく違和感になったのだが、俳優陣の演技は非常に良かった。

 

Apple+製作の配信映画だが、広大な戦場のスペクタクル表現は凄まじく絶対に映画館で見てほしい。

砲兵隊長のナポレオンだけに大砲をこれでもかと撃ちまくり、身体に響くじゅうていおんが最高に気持ちいい。

グラディエーター」の冒頭のような戦場のシーンが何度も何度も見られる脅威の構成だが、なんと撮影期間は2ヶ月ほどだったという。

ワーテルローの戦いでイギリス軍が敷く陣形の空撮には心が踊った。

皇帝となった戴冠式の華やかなシーンでもエキストラや衣装、美術の物量で圧倒的な画面を作り出していた。

驚くほど戦争を重ね無数の犠牲者を出した姿とは裏腹に一人の女性に心を乱される姿の温度差の表現もいい。

 

ただ最近のリドリー・スコット映画に共通して言えるのだが、脚本に恵まれていないように感じる。

「最後の決闘裁判」「ハウス・オブ・グッチ」など、近年のリドスコ映画はどれもダリウス・ウォルスキーの撮影は相変わらず素晴らしく映像面は申し分ないのに自分の中でイマイチ突き抜けきらない。

2時間半の本作にシーンを追加した4時間版もストリーミング用に作っているらしいが、それで根本的に解決するのかは正直よくわからない。

エイリアンの新作もまた手がけるらしいが、晩節を汚していると言われるのは不便なので上手くいってくれるといいな。