作品情報
原題:Theater Camp
出演:ノア・ガルヴィン/モリー・ゴードン/ベン・プラット/ジミー・タトロ/パティ・ハリソン/ネイサン・リー・グレアム/アヨ・エデビリ/オーウェン・シール/キャロライン・アーロン/エイミー・セダリス
制作国:アメリカ
上映時間:92分
配給:ディズニー
年齢制限:G
あらすじ
「アディロンド・アクト」はミュージカルスターを夢見る子供たちを長年に渡り指導してきた演劇スクール。しかし、夏キャンプ直前に校長のジョーンが昏睡状態になり、演劇を知らない動画配信者の息子トロイが跡を継ぐことに。しかし、スクールは経営破綻寸前だったことが判明。スクール存続のためトロイは3週間後のキャンプ終了までに出資者を集め、曲者教師陣や子供たちと新作ミュージカルを成功させなければならなくなる。
低予算ながら最後は確固たる実力派ミュージカルシーンに本気で感動
地味ながらもじわりと動員がつく作品が続き、何やかんやいい感じだったと思われる9月のシネコン。
そしていよいよ迎える10月。
秋の閑散期は相変わらずだが、こんな時ほど上映される密かな良作を見逃す手はない。
今回見たのはサーチライトピクチャーズが自信を持ってお送りする新作。
全編がモキュメンタリー(ドキュメンタリー風映像)で撮られた、群像ドラマのコメディ。
相変わらずディズニーに買収されてからは微妙な扱いを受けている印象が拭えない狐さん系の映画だが、作品の品質はいつも折り紙付きだ。
監督や出演者には傑作「ブックスマート」の脇役キャストや「ディア・エヴァン・ハンセン」のベン・プラット、今やたら名前を見るアヨ・エデビリなど、よく見たら知ってるけどそんな有名じゃない実力派が集結。
宣伝もほとんどなく、映画マニア向けにすら知名度が微妙で日本語wikiもほとんどない人たちが集まった超低予算(に見える)映画。
日本ではこういうサマーキャンプ的な文化も馴染みがない。
正直、劇場公開ってマジ?という印象が拭えず絶対入るとも思えず。(その予想は見事に当たる)
ただ、映画の内容は実にいい。
舞台劇への愛、舞台劇に携わる役者、裏方スタッフ、経営者たちのお仕事バトルに至るまで、アメリカンショービジネスをしっかり組み込みながらコメディとドラマを両立させている。
根っからのビジネスマンで動画配信者の息子トロイを、俳優活動も行うYoutuberのジミー・タトロが全力で戯画化された動画配信者っぽく演じているのがまた面白い。
ノア・ガルヴィン、モリー・ゴードン、ベン・プラットら実力派舞台俳優たちのパフォーマンスはお見事。
もっとも驚いたのはミュージカルに挑戦する子供たちで、その歌唱力とダンスの上手さたるや。
それでいて子供らしい振る舞いや表情を見せるのが何とも微笑ましく、舞台の裏側を全力で楽しそうに演じる大人たちとの相性がまたいい。
クライマックスで披露されるミュージカルシーンは大作映画のようなものとは違うが、生で舞台を見るかのような臨場感、そして何よりあまりにも高い歌とダンスのパフォーマンスレベルで、それまでのモキュメンタリーコメディを「ハハッ」と軽く笑いながら見ていたのが嘘のように本気で感動してしまった。
何か新しいものが生まれるタイプの映画ではないが、嫌味のない愛情を感じる素敵なミュージカル映画だった。
尺が短くサクッと見られるのが非常に良し。
多分見逃されるタイプの映画だと思うのですが物は非常にいいですので、ここはひとつ推しておきたいと思います。