作品情報
原題:Missing
監督:ウィル・メリック/ニック・ジョンソン
出演:ストーム・リード/ヨアキム・デ・アルメイダ/ケン・レオン/ダニエル・ヘニー/ニア_ロング
制作国:アメリカ
上映時間:111分
配給:ソニー・ピクチャーズエンターテインメント
年齢制限: PG12
あらすじ
南米・コロンビアを旅行中に突然消息を絶った母。デジタルネイティブ世代である高校生の娘ジューンは、ロサンゼルスの自室から検索サイトや代行サービス、SNSなどを駆使して母の捜索を試みる。スマホの位置情報や監視カメラ、銀行の出入金記録など、人々の行動・生活がデジタル上に記録されている現代。母を見つけることは簡単と思われたが、一向に行方をつかむことができない。事故か事件か、真相に迫るほど疑問が増え、ジューンは"秘密"と"嘘"にまみれた深い深い闇へと引き込まれていく・・・
スケールとスピード感に磨きをかけた正統後継者
パソコンの画面上で物語が展開していく斬新なサスペンススリラー「search サーチ」の第2弾。
このジャンルの火付け役になった前作から5年。デジタル環境の進化スピードは驚くほど早く、たった5年でもう前作は古く感じるレベルになってしまっているのでは?と思うくらいのパワーアップを遂げて「サーチ2」は帰ってきた。
ソニーはミステリーツアーならぬ「ソニピク謎試写」なる上映作品を伏せた試写会や、吹替版の同時公開などかなり大規模な展開をしているが、動員的にはやや微妙な様にも感じる。
「サーチ2」と言っても前作はマジで1mmも関係ない独立作品(原題も"Missing")なので、初見でも全然見られるし面白いので是非観てほしいのだが・・・
普段なら続編隠蔽でナンバリングを外した邦題をつけるのが通例という印象だが、あえて「2」としたのは「あの」サーチのシリーズであるというところを押した方が吉と考えたからなのだろうか。(これの良し悪しはこちらでは判断できない)
前作を監督したアニーシュ・チャガンティは製作に回ったが、前作の編集担当ウィル・メリック&ニック・ジョンソンが監督脚本を務めているので、この数年に量産された似た映画のようなパチモン感はなく正統継承作品に仕上がっている。
自分もデジタルネイティブ世代のつもりだった
一応平成生まれなのでデジタルにはまあまあ強いつもりでいたが、いわゆるZ世代というのはここまできているのか、というのが率直な感想。
怖がりが見たら一瞬でデジタル文化のアンチになりそうなくらい演出がキレッキレだし、多少映画的ご都合もあるとはいえ、パスワードリセットや位置情報検索などを使えばあれくらいのことは平気で出来てしまうんだろうなということが肌感で伝わってくるから本当に怖い。
映画で怖いってそういう感情だったっけ?もう新手のホラーだよこれは。
昔はネットは怖いから実名や顔出しなんてあり得ないという論調だったが、今となっては顔も名前も出して当たり前、むしろ現実とネットに境界がないとでもいうのだろうか。
便利さがデメリットを上回っていて個人情報などの提供もどんどんハードルが下がっているのは我が身にも感じている。
他人の悪いことは止められないかもしれないが、せめて自分は後ろめたいことのない良い人間になろうと思いました。
実は前作はハマらなかった
仕事後に観たのが悪かったのかわからないんですが、実は前作はほとんど寝落ちしてまともに観れませんでした。
工夫はしているけどやはり淡々としている画面が続くので集中力がもたなかったのか・・・?
なので今回も実はそんなに見る優先度は高くなかったのですが、U-NEXTポイントの期限が迫っていたのと近所の映画館で吹替上映を取り扱っていたのもあり「これも運命か・・・」と中学生の僕が背中を押して見にいくことに。(リズと青い鳥が大好きなので種﨑敦美を出されちゃ仕方ないよね)
結果としては(正直言い過ぎだろって思ってた)全シーン伏線のガチっぷり、こちらが飽きる前に次の展開をぶち込むスピード感と巧みに、でもギリギリ10代女子が出来そうな範囲のWEB操作で展開していく母親探しのミステリーが面白すぎて普通に楽しく見れてしまった。
重箱の隅を突くと「そこでPCの内カメラがついてるのおかしいだろ」とかいくらでも言えるしそれを言いたくなるくらいこのジャンルに懐疑的だったけど、ちゃんと面白かったのでもうそんなのどっちでもいいやと手のひらグルングルン回してました。
こんど1作目も観なおします。
これがZ世代向けの映画というものか
もう本当にミスリードのさせ方とかその物量自体がすごくて、映画何本分のアイデアが入ってるんだろう・・・脚本があざとすぎてアンチ湧くレベルだろ・・・とまで思った。
絡まった紐を解いていく様に展開するだけでなく、一つの答えに近づくと謎が3つ増えドツボにハマっていく。
最後は全て解決するのだけれど、綿密な構成で映画を作れるだけでもう偉いよなって感心した。
展開が目まぐるしく少し疲れるかもしれないけど、見るものを飽きさせないための工夫、特に「タイパ」なる言葉が当たり前に出てくるショート動画世代にはこのくらいのスピード感でないと映画なんて見てられないのかもしれない。(ガンダム最新作で現在放送中の「水星の魔女」の展開の速さにも通づるものがあるかしら)
そんなふうにも思ったのでした。
ありがとう、レンタルおじさん
レンタルおじさんって海外にもあるんですね。
最近は何でもあるんだなぁなんて思っていたけど、この映画で最も活躍したサービスの一つがまさかの「レンタルおじさん」なのである。
そもそも「レンタルおじさん」が何かわからない人のために説明すると、アプリなどに登録し自分で定めた時給をもらって依頼人から直接受けた仕事をするおじさんのことである。
利用者は老若男女問わず、例えば買い物の荷物持ちから人生相談、キャッチボールなど一人じゃできない事の練習相手、一人では行きにくい店についてきてもらうなど多岐にわたる。
おじさんたちは映画の様に特技やできることをプロフィールに記載し、空き時間にそのスキルでお金を稼ぐことができるのだ。
具体的な話は避けるが、海外で失踪した母を探すツールの一つとしてレンタルおじさんが大活躍する。
レンタルおじさんが世界中にあり、しかも映画のキーアイテムになる日が来るなんて誰が予想しただろうか。
しかもこのレンタルおじさんがまさかのポルトガル俳優ヨアキム・デ・アルメイダでちょっとテンション上がった。好きなので。
まとめ
前作はハマれなかった「サーチ」シリーズだが、本作はかなりパワーアップしていて過去作を観なおす気持ちが湧くほどに楽しめた。
今後もし3、4、とシリーズが続いたら、恐らく自分は全くついていけてないその時代のSNSやWebサービスをこの映画で知る、なんてことが起こるんだろうなと、そしてそんな人生も悪くないかなんて考えたりもした。
あくまでもエンタメとして映画のご都合を感じるところもあるが、軸となる家族愛の物語がなかなか良い出来なのでよし。
吹替版を観たのは偶然だったが、情報の奔流についていくのがやっとなので吹替で観ることはかなりオススメです。
ミステリーやスリラー的な魅力もそうだけど、個人的にはタイピング時に一瞬サジェストで映るテキストとか、うまくクリックできないとかPC上を見ている人間の視点の動きを絶妙に再現するカメラやカーソルの動かし方とか、そういう細かい遊び心にいちいちニヤッとしてしまう。(そして時折それすらもギミックとして活かしてくるのだから恐れ入りました」)
〈余談〉
劇場で吹替を見ることはあまり多くはないのだが、なかなか新鮮な体験だった。
種﨑敦美最高。(⇦これ多分中国人でも読める)
先が読めず常に予想を裏切ろうとしてくるタイプの映画は全員疑わないといけないから見るのがしんどいんだけど、レンタルおじさんのハビだけは宝亀克寿さんのおかげで「あ、こいつはいい人だ」と安心して見ることができました。
ハビのいる時間は心の休憩時間です。(サンキューハッビ)
ファイちゃんはいつものファイちゃんって感じのキャラで、それもまた良きでしたね。